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香港に半年も行かないと、香港に行きたくてうずうずしてくる。香港の良さとは何か。 決して買物が目当てではない。もともと円が高い頃だって、私は、香港で漁るような買物をしていたわけではなかったし、今や円安で、香港での買物のメリットは殆どないといっても良い。食事が目的か、と言われると、これはそんなに外れていない。香港の中華料理は本当に旨いと思う。そんなに有名な店や高級店に行くわけではない。むしろ、地元の香港人の中流家庭くらいが行くような日本人から見れば庶民的な店で、本当に旨い中華料理によく出くわす。食事は確かに旅の目的である。
お店の選び方
私も最初は、日本のガイドブックに出ているようないわゆる「有名店」に通った。もちろん、おいしい店も多いが、中には、とんでもない外れもある。それに、日本人だとみると、やれ、北京ダックだ、上海蟹だと、ボーイがうるさく勧めてくる。日本人ずれしているというか、ある意味では、観光客として初めて香港に行った人には親切なのかもしれないが、香港に住んでいた私には、やたらと煩く感じる。私にとっては、中国語で書いてあるメニューを見て、料理の姿や味付けを想像しながら、ゆっくりと自分で料理を選ぶ時間も、レストランに行く楽しみの一つなのだ。
そんな風に考えると、英語の通じないレストランが何といっても一番良い。何か一生懸命すすめてくれているようだが、こちらが広東語を理解しないとなると、そのうち諦めてくれる。ただ、店によっては、広東語もしゃべれないくせにこんなローカルな店に来るなとでも言っているような、怪訝な顔をされることがある。まあ、それさえ我慢できれば、自分自身で料理を選べるという点で、言葉が通じない店は最高だ。もちろん、旨くなければ駄目なのだが、……。
香港の中華料理は、広東料理が基本である。日本では、広東・上海・四川・北京といった料理の違いを感じることは難しい。例え、横浜の中華街に行っても、感じることは難しい。何故ならば、日本では、日本人の好きな料理、例えば、マーボ豆腐、えびのチリソース、チンジャオロース、酢豚、焼き餃子などがメニューに揃っていないと、お客様を集めることは難しいからだ。しかしながら、これらの料理は、基本的には広東料理ではなく、したがって、日本で広東料理の看板を出している店でも、「本来は、広東料理以外の中華料理」を、よく解釈すれば、「広東料理風」に調理しているのである。
朝食
私は香港を旅行すると、朝は粥、昼は飲茶、夜は本格料理と決めうちをする。実は香港には、イタリア料理やインド料理でも旨いレストランはあるし、たまには軽くハンバーガーなども食べたくなる。でも、せっかく香港に来ているのだから、香港でしか食べ られないものを食べ続けるのである。とにかく、朝は粥である。街のあちこちに粥屋はあるが、どこに入って良いか分からないというのが日本人の一般的な考えだろうと思う。そういう時は、香港人になって考える必要がある。香港人というのは旨い店には行くがまずい店には行かない。したがって、人だかりしている店は旨いが、逆に閑散としている店はまずいと思って良い。確かに、日本人と香港人の舌の感覚は違うので、香港人が旨いと考えているものが必ずしも私の舌に合うわけではない。が、一応の目安にはなる。
初心者コースとしては、コーズウェイベイの時代広場(タイムズスクエア)の地下にある粥屋などがおすすめだ。この店は、記憶では10時から店が始まるので、朝食の遅い人向きだ。何といっても、清潔感があってメニューがしっかりしている。そうそう、メニューに印をつけてオーダーするようになっているので、漢字が何となく分かれば、言葉なんてできなくとも平気だ。欠点は、粥屋にしては値段が高いこと、といっても大した値段ではない。ここで朝飯食ってタイムズスクエアで香港ブランドの買物でもすれば、気分は香港人
だ。ハッピーバレーやジョーダンなどにある大碗粥という店も清潔感が あって初心者向きだ。ジョーダン駅付近(山林道)にある店くらいになると、殆ど日本人に会わなくなる。観光客はあまり行かない場所で、香港に住んでいる日本人が足を運ぶくらいだ。この店もメニューがしっかりしているので、指で示せば問題無い。
このあたりで練習を積んだ人は、いよいよ本格的なローカル店に挑戦してみたい。どこでも良い。が、ビジネス街の方が面白い。セントラルやチムシャツィなどで、出勤途中のビジネスマンやキャリアガールなどと相席で、かき込むように粥を食べれば、世界を牛耳る香港ビジネスマンの仲間入りをしたような気分になれる。とにかく、人だかりしている店は外れが少ない。脇目もふらず食事している人やせわしそうに粥を待つ人などを見ていると、ちょっと気後れして入りづらいかもしれないが、勇気を出して空いている席に座ってみよう。その際に下手な英語で挨拶する必要などはない。どうせ半分以上の香港人は英語が通じない。まあ、軽く微笑んで座れば良い。そして、注文である。大抵は、メニューは壁に張ってあるか、或いは全くないかである。壁に張ってあって、しかも、何の粥か見当がつくようであれば、メニューを指差してみる。間違っても英語で言ったり、ガイドブックを見て広東語で言ったり(本人だけが広東語を話していると思っているだけで香港人にとっては広東語に聞こえないはずである。)してはいけな
い。粥屋のおじさんやおばさんにとって、一人の言葉のできない日本人に時間をかけさせられることなどは迷惑な話なのだ。忙しい朝のかきいれ時に、そんな暇はないのである。口と耳でコミュニケートしようとしても無理なので、指で示す。指が指し示す先には、壁に張ってあるメニューか隣の人が食べている粥があるはずである。
私が粥麺をよく食べに行くところは、中環の威霊頓(ウェリントン)街である。ここには、本当に沢山の粥麺屋が集中していて、いわゆる香港B級グルメの味を競い合っている。
昼食
昼食は飲茶にしている。最近はよく写真に出てくるようなワゴン式の飲茶ができる店が減ってきた。やはり人件費の高騰といった問題があるのだろうし、香港人に聞くと、オーダー式の方が出来立てを食べられるから好きだという人も少なくない。いずれにせよ、日本人としては、せっかく香港気分を味わいたいというのだから、ぜひワゴン式の店を探したい。
ところが、香港島のセントラルのあたりでは、なかなかワゴン式の店が見つからない。ありきたりでつまらないかも知れないが、香港大会堂(CITY HALL)にある美心(MAXIM)なんかは入りやすい。海の向こうに九龍半島を望みながら食べる飲茶はおすすめである。味は平均的だが、種類も多く楽しめる。ワゴンの前に広東語で料理名が出ているので、料理を想像しながらワゴンの中を覗いてみるのも楽しい。
さて、それでは、言葉が話せない人でも、雰囲気に同化して飲茶を楽しむコツを教えましょう。

- まず、席に着いたら、ウェイターが広東語で何か話してくるが、聞き取ろうなどと思ってはいけない。これは、お茶は何にするか聞いているので、私は迷わず「ポーレー」を指定する。飲茶は結構脂っこいので、油を流すポーレー茶が一番である。
- ところで、何人かで飲茶を食べる場合、通路側に一番詳しい人なり興味のある人が座るべきである。ワゴンが通った時におばさんに注文する役割を担うのである。
- 注文する時は、「ムゴイ」と言ってワゴンを止める。「ムゴイ」の発音は、「ム」は日本語の「む」と「ん」の間くらい、「ゴ」は日本語の「ご」と「こ」の間くらいで、「イ」は日本語の「い」で良い。これを「ゴ」にアクセントをつけて発音すると、それらしく聞こえるようだ。
- ワゴンを止めたら欲しい料理を指差す。セイロの中身が見えなかったら、また「ムゴイ」と言ってセイロをあけて中身を確認してみよう。こういうことに遠慮は要らない。おいしそうなら、その料理を指差しながら日本語で「これチョーダイ」とか言って、伝票を渡すこと。勿論、日本語を理解してくれるわけではないが、何となく欲しがっているとの意思表示になる。
- さて、飲茶セットであるが、香港では、皿はお碗を載せるものであって、料理を載せるものではない。すべて、このお碗の中に入れて、食べるのが流儀だ。
- 他人のお茶の茶碗があいたらお茶を入れてあげるのが礼儀だ。また、お茶を他の人に入れてもらった時は、人差し指と中指くらいでテーブルをトントンとたたく。これは「ありがとう」という意思表示なのだが、要は、話好きの香港人はいちいち「ありがとう」とか言って話を中断したくないため、指でありがとうという意思表示をするのである。本当に香港人は話好きだ。それに、声もデカイ。どこの飲茶屋も、けたたましい広東語がとびかっている。これをうるさいなどと思わず、快感に感じられるようになれば、一人前だ。
- 急須のなかのお湯が半分以下くらいになったら、お湯を注いでもらった方が良い。急須のふたをずらしておけば、ウェイターが熱いお湯を注いでくれる。
- さて、何を食べるかであるが、これはもう人の好みなので何ともいえないが、日本から来た人に楽しんでもらおうと思えば、まずは定番の「蝦餃」(「ハウガウ」と発音する。えび入り蒸しギョーザ)と「焼売」(シウマイ)は外せない。特にハウガウは日本で殆ど食べられないので、私も必ず注文する。また、シウマイについては様々な種類があるので色々試して欲しい。
- なかなか食べたいものが回ってこない場合には、思い切ってウェイターに聞いてみる。でも、9割方英語は通じないので、広東語で聞く必要がある。では何と聞くか。「ヤウモウ○○」と聞く。○○には品名が入る。したがって、「ヤウモウ・ハウガウ」とか言うのである。ここで、「ヤウ」とは「有る」という意味で、「モウ」とは「無い」という意味である。余談だが、「モウ」を広東語で書くと、「有」の中の「月」の部分の二本線を取った字になる。「ヤウモウ○○」はどこでも使える便利な表現なので、「ムゴイ」とともにぜひ覚えておきたい。
- 私は飲茶大好き人間なので、毎日飲茶を食べても飽きないくらいなのだが、一つだけ苦手な料理がある。とりの爪料理である。4・5回チャレンジしたが、いつも気持ちが悪くなってしまう。香港人はこれが大好きで、これを食べられない私をいつも気の毒そうに言っていた。興味ある人はぜひチャレンジしてください。料理名に爪という字が入っているのですぐに分かるはずです。
- それから、日本人は何かとヤキソバとかチャーハンといった主食が無いと食事した気分になれないかもしれないが、せっかく飲茶するなら、そういった主食は取らずに、とにかく沢山点心を取って腹いっぱいにした方がいいと思う。
- さて、腹一杯になったと思ったら、そろそろデザートにしよう。デザートの代表は「マンゴープリン」である。運良く回ってくれば良いが、来なければ、例の「ヤウモウ・マンゴープリン」と尋ねてみる。この場合、「マンゴープリン」の発音がなかなか通じない。「マンゴー・プーディン」という風に「プー」と伸ばし、「プー」を低い音で、「ディン」を高い音で発音すると比較的通じる。音階でいえば、「プー」が「ド」、「ディン」が「ソ」くらいの高さの差でどうでしょうか。マンゴープリンは何度食べてもおいしい。もう、やめられません。
- デザートも食べた。飲茶の雰囲気は十分に味わったということであれば、いよいよ、お勘定になる。ウェイターやウェイトレスに向かって手を挙げてサインする格好をすれば分かってくれる。広東語で言いたいのなら、「マイタン」と言う。「マイ」を低く、「タン」を高く発音する。値段はどこも明朗会計で、ワゴンの売り子が押した印の数により計算される。
- 飲茶の良さは、好きなものを好きなだけ食べられること。できるだけ数多くの種類に挑戦してもらいたい。そのためには、二人くらいで行くより、大勢で行って一口ずつ食べてみるのが良いと思う。少なくとも4人くらいで行くことをおすすめす.る。
- 最近、私がはまってきているのは、中国・広州の飲茶。レベルの高い美味しい点心が色々ある。加えて、雰囲気の良い店が沢山ある。例えば、「食は広州にあり」という言葉を生んだ広州酒家。ここでは、潮州式の飲茶が楽しめる。蓮香楼は本当に美味しい点心ばかりだ。香港の上環にある蓮香楼とは異なり、ハイレベルな雰囲気。また、泮渓酒家は動物などの像型点心を生み出した老舗で、味も素晴らしい。もう一つ、老舗の陶陶居も、いつも飲茶を楽しむ人で賑わっている。そして、値段は香港の半分程度だ。
- これらの老舗の店以外にも、美味しい店は沢山ありそうだし、何と言っても、朝から夜まで飲茶のできる店もあるので、飲茶ファンには嬉しい限りだ。香港から広州までは列車で2時間ほどの距離ですが、ぜひ、足を伸ばしてみてください。
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