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アジアグルメ図鑑(香港):香港「食事の楽しみ」




アジアグルメ図鑑(香港)


 香港に半年も行かないと、香港に行きたくてうずうずしてきます。香港の良さとは何か。 決して買物が目当てではありません。もともと円が高い頃だって、私は、香港で漁るような買物をしていたわけではなかったし、今や円安で、香港での買物のメリットは殆どないといっても良いでしょう。食事が目的か、と言われると、これはそんなに外れていません。香港の中華料理は本当に旨いと思います。私の場合、そんなに有名な店や高級店に行くわけではありません。むしろ、地元の香港人の中流家庭くらいが行くような日本人から見れば庶民的な店で、本当に旨い中華料理によく出くわすのです。私にとって、食事は確かに香港への旅の目的なのかもしれません。


お店の選び方

 私も最初は、日本のガイドブックに出ているようないわゆる「有名店」に通いました。もちろん、おいしい店も多いのですが、中には、とんでもない外れもあります。それに、日本人だとみると、やれ、北京ダックだ、上海蟹だと、ボーイがうるさく勧めてきます。これらの料理は、香港人はあまり好まない料理です。何故なら、北京料理や上海料理は、香港の広東料理とは味が異なるもので、彼らにとっては異国の料理に近いものだからです。
 日本人ずれしているというか、ある意味では、観光客として初めて香港に行った人には親切なのかもしれませんが、香港に住んでいた私には、やたらと煩く感じます。私にとっては、中国語で書いてあるメニューを見て、料理の姿や味付けを想像しながら、ゆっくりと自分で料理を選ぶ時間も、レストランに行く楽しみの一つなのです。

 そんな風に考えると、英語の通じないレストランが何といっても一番良いと思います。何か一生懸命すすめてくれていても、こちらが広東語を理解しないとなると、そのうち諦めてくれます。ただ、店によっては、広東語もしゃべれないくせにこんなローカルな店に来るなとでも言っているような、怪訝な顔をされることもあります。まあ、それさえ我慢できれば、自分自身で料理を自由に選べるという点で、言葉が通じない店は最高です。もちろん、旨くなければ駄目なのですが、……。
 香港の中華料理は、広東料理が基本です。日本では、広東・上海・四川・北京といった料理の違いを感じることは難しいといえます。例え、横浜や神戸の中華街に行っても、感じることは難しいのです。何故ならば、日本では、日本人の好きな料理、例えば、マーボ豆腐、えびのチリソース、チンジャオロース、酢豚、焼き餃子などがメニューに揃っていないと、お客様を集めることは難しいからです。しかしながら、これらの料理は、基本的には広東料理ではありません。したがって、日本で広東料理の看板を出している店でも、「広東料理ではない中華料理」を広く取り扱っています。よく解釈すれば、「広東料理風」に調理しているのですが、広東料理店が出す四川料理などは本場とは味付けが全く異なるといっても良いものばかりです。

 香港に来たら、基本は広東料理、または潮州料理を楽しむべきだとするのが私の考え方です。ただ、香港での滞在期間中、毎日、毎食、広東料理の本格料理を食べていたら飽きてしまいます。そこで、私なりに、食事の選び方を考えるようになるのです。
 私の考える「香港での食事の楽しみ方」をご紹介します。

朝食

 私は香港を旅行すると、朝は粥昼は飲茶、夜は本格料理と決めうちをします。実は香港には、イタリア料理やインド料理でも旨いレストランは沢山あるし、たまには軽くハンバーガーなども食べたくなることもあります。でも、せっかく香港に来ているのですから、香港でしか食べ られないものを食べ続けるのです。
 そういう意味では、とにかく、朝はお粥です。街のあちこちに粥屋はありますが、どこに入って良いか分からないというのが日本人の一般的な考えだろうと思います。そういう時は、香港人になって考える必要があります。香港人というのは旨い店には行きますがまずい店には行きません。したがって、人だかりしている店は旨いけれども、逆に閑散としている店はまずいと思って良いのです。確かに、日本人と香港人の舌の感覚は違うので、香港人が旨いと考えているものが必ずしも私の舌に合うわけではありません。が、一応の目安にはなります。
 初心者コースとしては、コーズウェイベイの時代広場(タイムズスクエア)の地下にある粥屋などがおすすめです。この店は、記憶では10時から店が始まるので、朝食の遅い人向きです。何といっても、清潔感があってメニューがしっかりしています。そうそう、メニューに印をつけてオーダーするようになっているので、漢字が何となく分かれば、言葉なんてできなくとも平気なのです。欠点は、粥屋にしては値段が高いこと、といっても大した値段ではありません。ここで朝飯食ってタイムズスクエアで香港ブランドの買物でもすれば、気分は香港人です。
 ハッピーバレーやジョーダンなどにある大碗粥という店も清潔感が あって初心者向きです。ジョーダン駅付近(山林道)にある店くらいになると、かつては殆ど日本人に会わなかったものです。観光客はあまり行かなかった場所で、香港に住んでいる日本人が足を運ぶくらいの店だったのですが、最近はガイドブックにも載るようになり、観光客も増えてきました。このあたりの店もメニューがしっかりしているので、指で示せば問題ありません。

 このあたりで練習を積んだ人は、いよいよ本格的なローカル店に挑戦していただきたいたい。どこでも良いのです。が、ビジネス街の方が面白いでしょう。セントラル(中環)やチムシャツィ(尖沙咀)などで、出勤途中のビジネスマンやキャリアガールなどと相席で、かき込むように粥を食べれば、世界を牛耳る香港ビジネスマンの仲間入りをしたような気分になれます。とにかく、人だかりしている店は外れが少ないのです。脇目もふらず食事している人やせわしそうに粥を待つ人などを見ていると、ちょっと気後れして入りづらいかもしれませんが、勇気を出して空いている席に座ってみましょう。その際に下手な英語で挨拶する必要などはない。どうせ半分以上の香港人は英語が通じません。まあ、軽く微笑んで座れば良いのです。
 そして、注文です。大抵は、メニューは壁に張ってあるか、或いは全くないかです。壁に張ってあって、しかも、何の粥か見当がつくようであれば、メニューを指差してみます。間違っても英語で言ったり、ガイドブックを見て広東語で言ったり(本人だけが広東語を話していると思っているだけで香港人にとっては広東語に聞こえないはずです。)してはいけません。粥屋のおじさんやおばさんにとって、一人の言葉のできない日本人に時間をかけさせられることなどは迷惑な話なのです。日本からわざわざお客さんが来てくれたなどと喜んでくれるおじさんやおばさんではないのです。忙しい朝のかきいれ時に、そんな暇はないのです。口と耳でコミュニケートしようとしても無理なので、指で示します。指が指し示す先には、壁に張ってあるメニューか隣の人が食べている粥があるはずです。
 私が粥麺をよく食べに行くところは、中環の威霊頓(ウェリントン)街です。ここには、本当に沢山の粥麺屋が集中していて、いわゆる香港B級グルメの味を競い合っています。また、上環の羅富記もお気に入りのお粥屋さんです。


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香港のホテル予約の時には口コミを参考にしましょう

香港のホテルも宿泊料が随分と高くなって、時には名も知れないホテルに泊まることもあります。
お金に余裕があれば、世界の一流ホテルチェーンのホテルを予約するのですが、
毎回の旅行や出張でそうしたホテルばかりに泊まれるわけではありません。
そんな時に役立つのがトリップアドバイザーの口コミです。
私の場合は、特に旅慣れた人(訪問都市が少なくとも50以上)の口コミを参考にしています。







昼食

 昼食は飲茶にしています。最近はよく写真に出てくるようなワゴン式の飲茶ができる店が減ってきました。やはり人件費の高騰といった問題がありますし、香港人に聞くと、オーダー式の方が出来立てを食べられるから好きだという人も少なくありません。いずれにせよ、日本人としては、せっかく香港気分を味わいたいというのですから、ぜひワゴン式の店を探したいと思います。

 ところが、香港島のセントラルのあたりでは、なかなかワゴン式の店が見つかりません。ありきたりでつまらないかも知れませんが、香港大会堂(CITY HALL)にある美心(MAXIM)なんかは入りやすいと思います。海の向こうに九龍半島を望みながら食べる飲茶はおすすめです。味は平均的ですが、点心の種類も多く楽しめます。ワゴンの前に広東語で料理名が出ているので、料理を想像しながらワゴンの中を覗いてみるのも楽しいものです。

さて、それでは、言葉が話せない人でも、雰囲気に同化して飲茶を楽しむコツを教えましょう。

  • まず、席に着いたら、ウェイターが広東語で何か話してきますが、聞き取ろうなどと思ってはいけません。これは、お茶は何にするか聞いているので、お茶の名前を言えば良いのです。私は迷わず「ポーレー(普洱茶)」を指定します。飲茶は結構脂っこいので、油を流すポーレー茶が一番です。
  • ところで、何人かで飲茶を食べる場合、通路側に一番詳しい人なり興味のある人が座るべきです。ワゴンが通った時におばさんに注文する役割を担うからです。
  • 注文する時は、「ムゴイ」と言ってワゴンを止めます。「ムゴイ」の発音は、「ム」は日本語の「む」と「ん」の間くらい、「ゴ」は日本語の「ご」と「こ」の間くらいで、「イ」は日本語の「い」で良いでしょう。これを「ゴ」にアクセントをつけて発音すると、それらしく聞こえるようです。意味は、「すみません」という感じのニュアンスです。
  • ワゴンを止めたら欲しい料理を指差す。セイロの中身が見えなかったら、また「ムゴイ」と言ってセイロをあけて中身を確認してみましょう。こういうことに遠慮は要りません。おいしそうなら、その料理を指差しながら日本語で「これチョーダイ」とか言って、伝票を渡すこと。勿論、日本語を理解してくれるわけではありませんが、何となく欲しがっているとの意思表示になるものです。
  • さて、テーブルの上の飲茶セットですが、香港では、皿はお碗を載せるものであって、料理を載せるものではありません。取り皿という概念はなく、取り碗であり、取り碗は皿の上に置きます。食べ物はこのお碗の中に入れて、食べるのが流儀です。
  • もう一つ、飲茶では重要な流儀があります。他人のお茶の茶碗があいたらお茶を入れてあげることです。また、お茶を他の人に入れてもらった時は、人差し指と中指くらいでテーブルをトントンとたたきます。これは「ありがとう」という意思表示なのですが、要は、話好きの香港人はいちいち「ありがとう」とか言って話を中断したくないため、指でありがとうという意思表示をするのです。本当に香港人は話好きです。それに、声もデカイ。どこの飲茶屋も、けたたましい広東語がとびかっています。これを騒々しいなどと思わず、快感に感じられるようになれば、一人前です。
  • 急須のなかのお湯が半分以下くらいになったら、お湯を注いでもらった方が良いでしょう。急須のふたをずらしておけば、ウェイターが熱いお湯を注いでくれます。
  • さて、何を食べるかですが、これはもう人の好みなので何ともいえませんが、日本から来た人に楽しんでもらおうと思えば、まずは定番の「蝦餃」(「ハウガウ」と発音する。えび入り蒸しギョーザ)と「焼売」(シウマイ)は外せません。特にハウガウは日本でおいしいハウガウは殆ど食べられないので、私も必ず注文します。また、シウマイについては様々な種類があるので色々試して欲しいと思います。何を食べるか、どこで食べるかなどについては、香港の飲茶のページを参照してもらうと良いと思います。
  • なかなか食べたいものが回ってこない場合には、思い切ってウェイターに聞いてみましょう。でも、9割方英語は通じないので、広東語で聞く必要があります。では何と聞くか。「ヤウモウ○○」と聞く。○○には品名が入ります。したがって、例えば「ヤウモウ・ハウガウ」とか言うのである。ここで、「ヤウ」とは「有る」という意味で、「モウ」とは「無い」という意味です。余談ですが、「モウ」を広東語で書くと、「有」の中の「月」の部分の二本線を取った字になる。「ヤウモウ○○」はどこでも使える便利な表現なので、「ムゴイ」とともにぜひ覚えておきたい表現です。例えば、ガイドブックの料理の写真を見せて「ヤウモウ?」と聞いても、意味は通じますよ。
  • 私は飲茶大好き人間なので、毎日飲茶を食べても飽きないくらいなのですが、一つだけ苦手な料理があります。とりの爪料理です。4・5回チャレンジしましたが、いつも気持ちが悪くなってしまうのです。香港人はこれが大好きで、これを食べられない私をいつも気の毒そうに言っていました。興味ある人はぜひチャレンジしてください。料理名に爪という字が入っているのですぐに分かるはずです。
  • それから、日本人は何かとヤキソバとかチャーハンといった主食が無いと食事した気分になれないかもしれませんが、せっかく飲茶するなら、そういった主食は取らずに、とにかく沢山点心を取って腹いっぱいにした方がいいと思います。そもそも飲茶とはお茶を飲むことであり、点心はお茶を飲みながらつまむものです。決して朝飯や昼飯を食いに来ているのではありません。
  • さて、腹一杯になったと思ったら、そろそろデザートにしましょう。デザートの代表は「マンゴープリン」です。運良く回ってくれば良いのですが、来なければ、例の「ヤウモウ・マンゴープリン」と尋ねてみます。この場合、「マンゴープリン」の発音がなかなか通じません。「マンゴー・プーディン」という風に「プー」と伸ばし、「プー」を低い音で、「ディン」を高い音で発音すると比較的通じる。音階でいえば、「プー」が「ド」、「ディン」が「ソ」くらいの高さの差でどうでしょうか。マンゴープリンは何度食べてもおいしいですね。もう、やめられません。
  • デザートも食べた。飲茶の雰囲気は十分に味わったということであれば、いよいよ、お勘定になります。ウェイターやウェイトレスに向かって手を挙げてサインする格好をすれば分かってくれます。広東語で言いたいのなら、「マイタン」と言います。「マイ」を低く、「タン」を高く発音する。値段はどこも明朗会計で、ワゴンの売り子が押した印の数により計算されます。
  • 飲茶の良さは、好きなものを好きなだけ食べられること。できるだけ数多くの種類に挑戦してもらいたいと思います。そのためには、二人くらいで行くより、大勢で行って一口ずつ食べてみるのが良いと思います。少なくとも4人くらいで行くことをおすすめします。
  • 最近、私がはまってきているのは、中国・広州の飲茶。レベルの高い美味しい点心が色々あります。加えて、雰囲気の良い店が沢山あります。例えば、「食は広州にあり」という言葉を生んだ広州酒家。ここでは、潮州式の飲茶が楽しめます。蓮香楼は本当に美味しい点心ばかりです。香港の上環にある蓮香楼とは異なり、ハイレベルな雰囲気。また、泮渓酒家は動物などの像型点心を生み出した老舗で、味も素晴らしいものがあります。もう一つ、老舗の陶陶居も、いつも飲茶を楽しむ人で賑わっています。そして、値段は香港の半分程度です。
  • これらの老舗の店以外にも、美味しい店は沢山ありそうですし、何と言っても、朝から夜まで飲茶のできる店もありますので、飲茶ファンには嬉しい限りです。香港から広州までは列車で2時間ほどの距離ですが、ぜひ、足を伸ばしてみてください。広州への行き方は、こちらで紹介しています。


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管理人が最近読んだ本

中華美味紀行 (新潮新書)

 中華美味紀行という題名の本ですが、内容の殆どがいわゆる小吃(点心や麺類などの軽食)をテーマにしたエッセイです。最近読んだなかでは、一番面白かった本です。
 作者の南條竹則さんは、高級料理店の料理は日によって味にバラツキが出ることがあるけれども、小吃の味は安定していて旨い店は旨いのだということを書いていますが、これは私と全く同意見です。
 あるときは「小林秀雄の蟹まんじゅう」を求めて揚州の小路に入り込み、あるときは杭州の高級料理店で満漢全席の至福に身を委ねる。中国の千変万化の食文化の魅力にとりつかれた作者の思いが全編にみなぎる力作エッセイです。

「アジアグルメ図鑑」では中国茶の販売を開始しました

 中国茶には、質も値段もピンからキリまであります。今回販売を開始した中国茶は、ご家庭で家族や友人たちと気軽に飲めるお値段ながらも、おいしい中国茶ばかりです。特に、日本中国茶普及協会の役員をしている中央茶葉公司の各種中国茶を多く取り扱っています。なお、聘珍樓の点心などもありますので、飲茶もお楽しみいただけます。
 ぜひ一度、こちらの専用サイトをご覧ください。




夕食

 せっかく香港に来たのですから、夕食は本格的な中華料理を楽しみたい。ツァーなどで食事付きですと、自分で店を選んだり料理を選んだり出来ないので、香港に行く目的が「食」にある私に言わせると、それでは何のための香港なのか分からなくなってしまいます。香港に行くこと、すなわち、香港で旨いものを食べることでする。
 で、「朝は粥」「昼は飲茶」と中華料理を楽しんで、夜はどうするのか、という問題です。ここで、「夜」と言ったときに考える食事は、「夕食」と「夜食」です。まず、夕食です。

★香港ではどんな中華料理が旨いのか

 一口に中華料理と言っても、香港や中国へ行けば、どこでも中華料理です。(もちろん、フランス料理や日本料理など各国の名前を冠したレストランは別ですが、……。)で、星の数ほどある中華料理屋の中から、自分のイメージしている料理を食べさせてくれるレストランを選ばなければなりません。これは、簡単そうだけど難しい。
 何故簡単かといえば、運が「悪ければ」、自分の店の専門外の料理でも、すなわち普段作りなれない料理でも出してくれる店はいくらでもあります。そういう意味で、自分の食べたいものを食べさせてくれる店はいくらでもあります。但し、それらが旨いかと言うと、多くの場合は旨くありません。それはそうです。いくらレストランのシェフと言えども、普段作り慣れないものについて細かな味付けまで天下一品にすることは困難だからです。すなわち、自分の食べたい中華料理に辿りつくことは容易なのですが、本当に美味しい料理に辿りつくのはそれほど簡単なことではなく、むしろ難しいと言ってもいいのです。
 だから、香港で美味しい食べ物にありつくためには、自分で店や料理を選択できる程度に、中華料理に詳しくなっておかなければなりません。例えば、○○という中華料理は、広東料理なのか上海料理なのか四川料理なのかといったことは、当然ながら分かっていなければなりません。
 ツァーで食べればいいじゃないかという考えもあります。私は、それで満足できる方はぜひそうして下さいと申し上げたい。私の知っている限り、ツァーで良く使われるレストランでは、ツァー客だと普段と料理を変えたり、材料を変えたり、ある店ではフロアを変えたり、勿論サービスも変えたりしています。これは、香港人からすれば当然です。何故ならば、ツァー客は一見のお客さんだから、美味しいものを出したからといって、また、近いうちに来てくれる客ではないからです。香港のように厳しい競争社会では、取るか取られるかの客に対しては全身全霊を傾けた料理が出されますが、一見の客に対しては魂の入っていない料理が出されるのです。その魂の入っていない料理であっても、日本より安く材料が手に入ることもあって、香港では、日本と同じ金を払えば、日本よりも旨いものが食えてしまうから始末が悪いと言えます。厳しい言い方をすると、多くの日本人は本当に旨い中華料理を知りません。だから、そんなツァー料理でも満足してしまうのです。

 ツァー料理批判が長くなってしまいました。本題に戻します。そう、旨い中華料理に出会うためには、ある程度中華料理に詳しくならなければならないということまでお話ししました。ここでは、ポイントを5点挙げたいと思います。


(1)中華料理の種類・系統を知る

 第一に、中華料理の種類を知ることである。あなたが食べたい中華料理がどの種類に入るのかを知らなければ何事も始まりません。
 最初に断っておきますが、料理の種類として、「広東」「潮州」「上海」などと並んで、「海鮮料理」を挙げたのは、実は正しい分類ではありません。ただ、香港で店先で材料(魚、蝦や貝類など)を買ってその場で料理してもらうというのは、香港での食の楽しみの一つであり、私としては旅行者の楽しみ方から見た分類として、敢えて一つの分類としています。実を言うと、香港にある海鮮料理店の多くは、広東料理屋か潮州料理屋です。
 下に料理の特徴や代表的な料理を挙げています。代表的な店はガイドブック等で調べて欲しいと思います。ただ、ガイドブックに出ている店がいい店かというと、必ずしもそうではありません。料金の高い店はなるほど外れが少ないのですが、ただ、それだけのコストを支払うのだったら、よその店ではもっと旨いものが食べられるかもしれません。そんなこと言ってしまったら、ガイドブックを見てくださいなどという言い方は、無責任な言い方になってしまうのですが、そこが香港の難しいところで、実はシェフが変わる、店の場所が変わるなど、変化が激しいところなので、私の現在の知識なんか、すぐ陳腐化してしまうのが香港なのです。だから、「この店は美味しい」と私が書いても、その後にシェフが代って料理が旨くなくなってしまう店もありますし、私が書いた場所から移転してしまう店も少なくないのです。だから、私自身が無責任にならないためには、可能な限り、店の固有名詞は出さないに越したことはないのです。
 それではどういった店を選んだら良いのか。前に書いたことと重複しますが、地元の人で混んでいる店を探したら良いのです。とは言っても、香港に住んでいる人ならともかく、短期間の旅行者にとって、これは結構つらいことです。ただ、とにかく、レストランを見かけたら観察するのです。大人数の家族同士で食べている香港人が多い店は、結構安くて旨いところが多いのです。自分の舌に合う店が見つかるまでは、そのようにして努力します。失敗も重ねながら、努力して初めて、本当に満足できる「自分の味」に到達できるのです。

料理の特徴 代表的な料理
広東料理
(粤菜)
広東省で生まれた料理。
素材の持ち味を活かした料理が基本。香港では最も一般的。
白灼蝦
化皮乳猪
清蒸石斑魚
潮州料理
(潮菜)
広東料理の一分野。潮州とは広東省東部海岸沿い。高級海鮮料理が有名だが、家庭料理も見逃せない。 鹵水鵝片
〔虫豪〕煎
潮州凍蟹
上海料理
(滬菜)
揚子江下流流域での料理の代表格。
一般的に味付けが濃く、甘辛い料理が多い。
清炒蝦仁
上海蟹
小籠包
北京料理
(京菜)
北京地域の料理。広東→上海→北京→四川の順に味付けが濃くなる。
その分、素材そのものの味から遠くなる。
北京〔火考〕鴨
木須肉
水餃
四川料理
(川菜)
揚子江上流地域を中心とした中国内陸地域の料理。スパイスを効かせた料理が特徴である。 麻婆豆腐
青椒肉絲
回鍋肉
海鮮料理 店頭で素材を選び、好みの調理法で、食べさせてくれる店。
上級者向けだが、これを始めたらやめられない。
白灼蝦
清蒸石斑魚
蒜茸〔火局〕龍蝦

このくらいの単語は知っておこう

【猪】豚肉 【鴨】アヒル 
【鶏】鶏肉 【鴿】ハト 
【鵝】ガチョウ 【牛】牛肉
【牛排】牛ロース 【牛柳】牛フィレ
【蛋】卵 【蝦】海老 
【龍蝦】ロブスタ 【石斑】ガルーパ
 【帯子】ホタテに似た貝
【魚翅】フカヒレ 【田鶏】蛙 

【炒】強火で炒める 
【爆】強火ですばやく炒める
【煎】少量の油で炒め焼く 
【〔火考〕】直火であぶり焼く 
【炸】多量の油で揚げる
【煮】スープに煮込む 
【焼】水分が無くなるくらいに煮込む
 【灼】ゆでる 【湯】スープ 
【鹵】たれにつけこむ
【〔保/火〕】土鍋煮込み
【酔】紹興酒に漬け込む
【片】薄切り 千切り【塊】ぶつ切り 
【末】みじん切り【丁】さいの目切り
 【丸】団子状 【全】丸ごと

北海道
地酒
ワイン
日本酒
北海道の海の幸
お米
道産米
北海道米

(2)ある程度メニューを解読できるようにする
 
 旨い中華料理に出会うためのポイント、その第二は、メニューをある程度解読できるようにすることです。上にメニューで使われる単語をいくつか載せていますが、少なくともこれくらいは分かっていて欲しいと思います。でも、これが分かったくらいでは、メニューの解読は2割くらいしかできないことも分かっていてください。最近の旅行のガイドブックにはかなり詳しくメニューの解読法などが載っていますが、あそこまで仮に分かっていたとしても、イメージの違う料理が出てくることがあります。だから、完璧に分かろうとすることは諦めて、ある程度読めるようにすること、使われている素材が分かることくらいで満足すべきだと思います。香港で美味しい料理に出会うためには、むしろ、このメニューの解読より、ここで言う他の4つのポイントの方が重要だと思います。

(3)香港で美味しく食べられる中華料理の種類を知る

 旨い中華料理に出会うためのポイント、その第三は、香港で美味しい中華料理の種類を知ることです。一般的に、香港で旨い中華料理は、広東料理と潮州料理であると言われています。これは正しいのかといわれると、私の知っている限り、残念ながらその通りだと思います。要は、地元の人々の舌に合った料理を出すレストランというのは、旨いのです。そういった意味で、上海料理も、レベルは高いといえます。これは、多くの上海人が香港に移り住んできたという歴史から来ています。(勿論、香港人の大部分は、現在の広東省出身です。)
 したがって、最近私が香港に短期間で行く場合は、潮州料理、広東料理と上海料理を食べようとしています。2泊するなら、潮州と上海、3泊するなら、これに海鮮を入れる。もう一泊するなら、広東料理を加えたいですね。
 それから、もう一つの観点として忘れてはならないのは、日本で食べたらとんでもない値段を取られてしまうような、いわゆる「高級料理」を食べたいのか、それとも、「家郷菜」とか「家常菜」といわれる、いわゆる「香港の家庭料理」を食べたいのか、これをはっきりしておくことも大切です。これによって、同じ潮州料理でも行くレストランも違えば、注文するメニューも全く異なってしまいます。私の場合は、お金持ちじゃないので、普通は家庭料理コースですけど。
 こんな感じで、出発する前に食べようとしている料理の種類を決めます。それから、毎日のメニューを頭で考えておきます。そうしておくと、旅行に行く前にも香港を楽しめるし、実際に行ったときには、自分の目指す料理にありつけるというので、一挙両得なのです。

(4)メニューの組立ての達人になる

 
第四に、スープ、前菜とか、デザートといったメニューの組み立てです。これは、一緒に食べる人数によっても異なるのですが、まず、前菜、これは食べたいですね。それから、スープ、これも捨てがたい。そして、メインディッシュとして何を食べるか、ここが一番のポイントです。料理を何皿頼むのかということも大切なポイントです。香港や中国のレストランでは、一皿あたりの分量が、特に表示されている場合を除き、日本よりずっと多い。倍かそれ以上を想定していいと思います。香港人の注文の仕方を見ていると、注文するお皿の数は、基本は「人数+1」です。3人で行ったら、4皿注文するのが一般的ということになります。デザートはこの数の中に入りません。また、人数が少ない場合は、スープはその枠外で計算します。(スープを入れると、人数+2品になるという意味です。)
 だから、中華料理を二人で食べに行ってもあまり種類を食べられません。少なくとも4人、できれば6人以上で食べたいところです。
 メニューの組立てとしては、素材が偏らないようにすること、味付けが似たようなものにならないこと、そして、料理の種類[広東料理、潮州料理等]の特徴を生かしたメニューにする、などに気をつけて選ぶことが重要です。

★前菜

 まず、前菜。ここは、広東料理だと焼味かな。個人的には、化皮乳猪(子豚の皮のロースト)なんか大好きですね、一緒に食べる人の好みによってあひるのローストになってしまうこともあります。潮州料理だと、鹵水鵝片で決まり。上海料理だったら、クラゲの冷菜をおすすめしたいと思います。
 そして、もう一つ前菜のうちに入ってしまうけど、小エビの料理。広東料理と潮州料理では白灼蝦(ゆでえび)、上海料理では清炒蝦仁(むきえびの炒め物)。この小エビ料理は、香港に旅行で行く人なら、ぜひ食べてもらいたい。日本のエビよりずっと美味しい小エビを、シンプルな料理だけど、とても美味しく食べることができるということを経験してもらいたいのです。人数の関係で前菜を一つにしなければならないのなら、焼味系をやめて、小エビにすることをオススメしたい。白灼蝦(ゆでえび)について言えば、小さすぎず大きすぎずのエビがこの料理では旨いですね。それから、日本人の大好きなエビのチリソースですが、これは四川料理なので、香港では人気がありません。大体において、私なんかは、素材の味を殺してしまうチリソースを海鮮料理に使うこと自体がもったいないと思ってしまいます。鮮度の落ちたエビならそれでもやむをえないと思いますが、香港のエビをそんな食べ方で料理するのは、もったいないのです

★スープ

 次にスープです。中華でスープといえば、フカヒレスープがあまりにも有名です。確かにフカヒレスープは旨い。だけど、旨いものは高い。そこでなのか、それとは全く関係ないのかは知りませんが、フカヒレと蟹のスープとか、フカヒレとイカのスープだとか、いわゆる純粋でないフカヒレスープが存在します。これだと、フカヒレスープほど高くなく、庶民のお財布でも注文することができます。でも、私の経験上、金をケチってフカヒレと蟹のスープなんか飲むと、やっぱりもう一つ満足できなくて欲求不満になってしまいます。フカヒレはフカヒレなのです。「ごった」フカヒレスープはあまりオススメできないな。さて、フカヒレ以外のスープですが、香港のスープはどれも美味しいです。食べなれないフカヒレスープを飲むのも経験としてはいいですけど、それ以外のスープにも挑戦して欲しいと思います。私は殆どハズレに当たっていません。野菜のスープも美味しいですよ。大極模様の野菜スープなんかは見た目も緑と白のコントラストが綺麗で、日本から来た人に好評だったものです。それから、スープとは一線を画するけど、上海料理では、スープの代りに「砂鍋」といわれる土鍋煮込みスープを注文することにしています。「砂鍋」の前後に「魚頭」と来れば魚の頭が入っているし、「什錦」と来れば五目土鍋スープです。これがいいダシが出ていて、旨いんです。勿論、庶民の料理ですけど。

★メインディッシュ

 そして、いよいよメインディッシュ。香港では、何と言っても、「清蒸石斑魚」(蒸しガルーパ)が一番です。ちょっとした店に行けば、生簀からすくってきて「これでいいか」「○○元だよ」とレストランの人が見せてくれます。こぶり過ぎると味は落ちます。イキのいいやつを選んで欲しいと思います。一方、上海料理で魚というと、白身魚の甘酢あんかけみたいのが主流で、勿論美味しいのですが、豪華さに欠けます。
 魚のついでに蟹の話しを。蟹といえば上海蟹があまりにも有名ですが、おいしいけど、食べるところが少ないなあ。香港人に言わせると、上海よりも香港のほうが美味しい蟹が食べられるといいます。旨い蟹が香港に持っていかれてしまうからだといいます。だから、香港人は時期が来ると、こぞって上海蟹を食べに行き、「あそこの蟹は安くて旨かった」などと翌日は蟹談義になります。そうやって、香港人がみんな食べたがるから上海蟹は、香港においてますます値が上がってきてしまうのです。確かに旨いので、1回は食べてみる価値はあるかもしれません。一方、潮州料理で蟹といえば、花蟹です。蒸すと赤く染まって綺麗だし、豪華さもあります。味はまあまあといったところでしょうか。私の場合、6人以上くらいで潮州料理を食べるときには注文するようにしています。
 高級品では鮑(アワビ)があります。鮑のステーキなんかはかなり旨いです。ただ、お金は随分と取られてしまいます。接待のときは別として、自分で食べる気はしないなあ。どうしても食べたくなったら、マカオとか深圳や東莞あたりまで行って食べたら、随分と安く食べることができます。私もマカオや東莞でよく鮑を食べたものです。
 もう一つ海鮮ものでは、帯子(ホタテのようなもの)があります。これは、ブロッコリーと炒めたり、イカと炒めたり、豆腐に乗せたりで、さっぱり系の料理になることが多いので、私は好んで食べています。私としては、栄養バランスから考えて、野菜と炒めるのことが多いですね。これも、私が香港に行ったときのお決まりのメニューの一つです。
 さて、メインディッシュとして海鮮もの以外はどうか。まず、語りたいのはハトです。広東料理では、ミンチのレタス包みも丸焼きも結構美味しい。日本のハトと違って養殖ものですから、上野公園のハトを捕まえて焼いてもあの味は出ないと思います。
 鶏の系統では、上海料理にこじき鶏が有名です。鶏を蓮で包んで、さらにその周りを粘土でくるみ、強火で焼いたもので、焼いて固まった粘土をお客さんに木槌で割らせるというショー的要素があるだけでなく、割れた粘土の中から、ジュージュー香り豊かに姿を見せる蒸し焼きされた鶏も感動的です。これも美味しいですね。日本から来た子供がいるときには、これを注文することにしていました。
 上海料理で肉というと豚肉です。私のよく行く雪園飯店の豚膝の煮込み(紅焼元蹄)は絶品です。これはもうくせになる味です。こればかりでなく豚を使った上海料理では、東坡肉(豚ばら肉のしょうゆ煮込み]も有名です。若干脂っこいところが欠点ですが、いずれも日本人の舌には合うと思います。大人数で食べるときには注文したい料理です。
 中華料理で牛肉の料理というと、あまり美味しいのに出くわしません。香港では、鶏・豚、牛の中で、最も人気がないのが牛です。

 さて、メインディッシュの後に、チャーハンか焼きそばを食べたくなるのが日本人です。私もかつはそうしていました。でも、今では、白飯をもらって、蒸しガルーパとかおかずをかけて食べるようになりました。それで十分満足できるからです。でも、中華料理を食ったら、やっぱりチャーハン、ヤキソバがなきゃ、という人のために一言。
 香港のチャーハン、ヤキソバは、はっきり言って旨い。広東料理店では、チャーハンを頼むようにしています。特に福建チャーハンがオススメです。チャーハンの上にあんかけの具がたっぷり乗っているので、お椀に分ける前にこれをよくかき混ぜて食べること。私も一時期、福建チャーハンにハマリました。ヤキソバは、ちょっと脂っこいので酢をたっぷりかけて食べると美味しく食べられます。潮州料理店では、潮州炒麺を注文していました。麺が平たいのが特徴で、脂っこいけど美味しいです。細麺では伊麺[イーメン]があって、こちらの方がさっぱりした味です。上海料理店でチャーハン、ヤキソバを頼むなら、上海炒麺といわれる焼うどんのようなものを注文することが多かったですね。上海料理のチャーハンは楊州チャーハンといわれる日本のチャーハンに似たものが主流です。
 
★デザート

 腹一杯になったところで、デザートの注文です。私はさっぱり系のデザートが好きです。西米露とかマンゴープリンといった類のものです。甘い系統だと、潮州料理の水晶飽あたりは好きです。潮州料理は全体的にあっさり目なので、こういう甘いものでも私の胃が受け付けるのだと思います。逆に、広東料理とか上海料理のデザートとしては、さっぱり系が欲しくなるのは、料理が潮州料理に比較すると脂っこいからなのかもしれません。。

(5)酒はほどほどに

 最後に、飲み物です。せっかく香港で本場の中華料理を食べるのですから、ビールで腹一杯にならないようにしたいものです。また、舌の感覚を鈍らせないためにも、あまり大酒をくらってはいけません。勿論、食前酒程度に飲むのは、むしろ胃の働きを刺激してくれるので良いと思います。ただ、酒は控え目にして、その後、お茶を飲みながら食べた方が、私は美味しく食べられると思う。折角の香港グルメです。十分に味わって食べてください。因みに、私は酒が大好きな人間なのですが、……。




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香港うまっ!食大全

 香港の食文化に造詣の深い写真家の菊池和男さんが、最新の香港グルメ情報を紹介している本です。発行は、2010年6月です。
 これまで菊池さんは、どちらかと言うとマニアックな内容の本が多かったのですが、今回の本は、香港初心者の方から香港リピーターまで幅広く受け入れられるのではないかなと思います。
 私と同じように、菊池さんも「香港では高い金を払わなくても、美味しい料理を食べさせてくれる店は沢山ある」と考えている方です。香港で高いお金を出したら、美味しい料理が食べられるのは当たり前です。そうしないでも美味しい料理を食べたい人は、私のサイトか、この菊池さんの本をよく読んでみてください。

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