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深圳の杭州料理店「西湖春天」|アジアグルメ図鑑(香港)


 深圳の杭州料理店「西湖春天」



 ある12月、深圳にいる中国人の友人を訪ねました。この時期がちょうど旬になりますので、友人には予め「上海蟹が食いたい」ということを伝えておきました。
そして、連れていってもらった店がここ、「西湖春天」。
 店の名前もいいけど、入口の看板もいいですね。友人に言わせると、新しい店だけど、旨くて安いので、人気が高いということです。
 杭州は浙江省の首府で、上海から南西に約200km離れたところにあって、西湖を中心に風光明媚な地域です。私も何回か杭州を訪問していますが、西湖の風景や杭州の街の雰囲気がすっかり好きになってしまいました。
 なお、今日の案内人陳さんは浙江省寧波市の出身です。杭州料理をはじめとした江南料理が大好きだそうです。


 お店の中の雰囲気です。まだ新しいこともあって、綺麗ですね。客層も良さそうです。それから、店員もてきばきしていて気持ちよかったですね。
  しかし、お客さんはいっぱいですね。ここで食べる場合は予約をしておいた方が良さそうです。深圳という街は、もともと深圳人という人はごく稀で、中国各地から人が集まってきている街です。陳さんのように浙江人もいれば、四川人、北京人、上海人、湖北人、山東人、東北人等々、各地から来ているわけで、そうした人たちの肥えた舌をうならす中国各地の地元料理の店が色々とあります。


 この店の食器は、黄色で統一されていて、デザインとしては現代的です。また、テーブルクロスもクリーム色です。他のレストランにはないセンスを感じさせます。
 さて、今日の料理はすべて私の中国の友人、陳さんの選んだ献立です。杭州料理ということもあって、広東料理では見かけない料理がどんどん出てきます。


 最初の料理は酔泥螺です。これは小さな貝を紹興酒につけたものです。見た目にグロテスクな料理ですし、名前を聞いたら泥臭い味を想像してしまって、食指が動かないのですが、食ってみると、旨い!紹興酒につけてあるからなのか、臭みはないですし、泥螺と呼ばれる貝類もコリコリしていて旨いです。酒のつまみとして、これは最高です。気に入りました。
 ところで、紹興酒の紹興というのは、浙江省の都市の名前で、杭州から約60km離れたところに所在しています。紹興酒の本場はこの紹興市です。紹興市は、まだ日本からの観光客は少ないですが、見所の多い街です。私もすっかりとりこになっています。
 なお、紹興酒は2000年以上の歴史を持つお酒で、贈答品等に使われてきたほか、結婚式には女の子が生まれた時に封印した紹興酒を振舞う習慣があるなど、伝統のあるお酒です。ついでですが、中国では日本のように紹興酒に砂糖を入れて飲む習慣はありません。お燗をするか、氷を入れてロックで飲みます。


 寧波風ウナギ炒めです。見た目は脂っこいのですが、意外にさっぱりした味です。ただ、日本のウナギよりは臭みがありますので、食べ慣れていない日本人の口にはどうかなと思います。私はこれ、好きなんですけどね。
 寧波は、杭州から紹興を過ぎてさらに100kmほど東に進んだところにある都市で、やはり浙江省に所在しています。昔から、天然の良港として知られた場所で、交易の中心として昔から栄えてきた街です。例えば、日本の遣唐使も寧波から中国に上陸しています。
 ところで、この料理は上海料理で食べるウナギ炒めとよく似ていると思いますが、なぜ、寧波風というのか、これを陳さんに確認するのを忘れました。


 日本人に最も有名な杭州料理とはこの東坡肉ではないでしょうか。これは、脂っこい、こってり料理です。この料理が有名なせいか、杭州料理はこってりしていると思いがちですが、むしろこれが例外ですね。ただ、杭州料理は水産物中心とはいえ、湖沼の水産物なので、臭みなどを消すために、素材の味そのままというわけではないのです。素材の味をできるだけ生かしている潮州料理とは、そこが違います。
 さて、東坡肉は日本語では一般的に豚の角煮なんて書かれますが、そんな単純な表現では言い表せない旨さです。私なら、「豚ばら肉のこってりとろとろ煮」とでも翻訳します。この東坡肉の料理名には歴史があります。
 西湖を舞台にした詩を書いている蘇東坡は、宋の時代の杭州地域の太守(首長)でした。蘇東坡は西湖に蘇堤を作ったことでも名を残していますが、こうした工事に関わった労働者たちの労苦に報いるために、蘇東坡が振舞った料理がこの料理ですので、蘇東坡の名前を取って「東坡肉」と言われているわけです。
 器が深くて暗いのでちょっと写真の映りは悪いのですが、ここの東坡肉もしっかり煮込んであります。おそらく丸一日くらい煮込んでいるのではないでしょうか。柔らかくて醤油などをベースにしたタレの味が染みこんでいて、すごく旨いです。合格です。ただ、カロリーだけが心配です。




 カロリーが心配になった後にこういう料理が出てくるとほっとしますね。お麩と糸瓜の土鍋煮こみです。これ、完全に日本のおふくろの味という感じですね。和食の店で出されても全く違和感がありません。麩はふっくらとしていて、味付けはさっぱり味。
 東坡肉の後にこの料理が出てくるところなど、陳さんのメニュー組み立ては心憎いばかりです。
 さあ、胃の中もさっぱりしたところで、そろそろ蟹が出てきそうだなあ。


 やっぱり出てきました。上海蟹です。いい色ですね。見るからにウマソーです。上海蟹の中でも最上級は陽澄湖のものですが、これはまさにそれ。上海蟹のシーズンは10月から12月くらいで、このときは12月ですので、おすが旨い時期です。
 実は深圳に行く前の月に、日本で上海蟹を食おうと思って値段だけ聞いてみたことがあるのですが、4千円もするので、泣く泣く見送ったばかりでした。嬉しいです。こんな見事な上海蟹に会えて。
 さあ、食いましょう。


 駄目ですね、私って。
 食い気に走って、味噌がたっぷり入っているやつを、もう、食ってしまいました。食う前に写真撮ろうと思っていたのですが、見た瞬間に食い始めてしまいました。もはや、残骸状態ですが、旨かったということだけ報告しておきます。
 上海蟹は、身は大して旨いとは思いませんが、ついついしゃぶり尽くしてしまいます。うーん、旨いなあ。
 で、実はこの店の支払いは陳さんがしてくれたのですが、この店を出てから参考のために値段を聞いたら、3人で400元くらいだということですから、やっぱ、深せんは安い。でも、こういう店も日本人が増えると、日本人価格ができてしまったりするから、あまりみんなに教えないようにしたいですね。


 上海蟹をちゃんとした店で食うと、食い終わった後、ジンジャー・ティが出てきます。これは体が冷えないようにするため飲むものです。しっかり全部飲みましょう。


 野菜と若いたけのこの煮込みです。これもさっぱりした味付けです。たけのこも柔らかく緑の野菜もほうれん草みたいなようですが、どうやら違うようです。
 この料理は、初めて食いましたね。蟹を食った後だからでしょうか。ちょっとパンチに欠けました。


 魚丸です。魚の団子です。デザート代わりに陳さんが注文しました。とにかくさっぱりしています。
 もう、腹一杯で甘いもの食うより、確かにこのさっぱりした麩の方が私にも良かったと思います。


 西湖春天はビルの2階にあります。深せん市の市街にありますので、もし、興味を持たれた方がいたら、ホテル等で聞いてみてください。
 実は、私は住所と電話番号を知っているのですが、あまり日本人が行くようになると、値段が吊り上げられたりしそうですので、ごめんなさい、内緒にします。