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上海料理も美味い! 老上海飯店|アジアグルメ図鑑(香港)


 上海料理も美味い! 老上海飯店の上海料理


香港の上海料理の老舗、老上海飯店


 香港の上海料理については、90年代くらいまでは質が高くまた廉価というイメージが強かったのですが、最近では美味しい上海レストランにどうもお目にかかれません。やはり、上海の景気が良くなり良い料理人が上海にも行くようになってしまったのかも知れません。ただ、料理人の引き抜きなどは上海料理のみならず広東料理などにも共通したものであるはずです。広東料理レストランでは相変わらず質の高い料理を出してくれるのですから、質の高い上海料理レストランもあるはずです。
 そんな確信を持ちながら、大きな期待を持って私が訪問したのは、90年代に香港に住んでいた私が当時の記憶で最も良い印象を持っていた上海料理レストランの一つ、湾仔の老正興菜館です。創業1955年の老舗です。2003年にオーナーが代わり、名前も香港老上海飯店に替わったようです。ノボテル・センチュリーホテルの地下にあります。ここなら、満足できる上海料理が食べられるはずです。


 実は、今回は出張時の一人夕食です。ビールなど飲むと、ただでさえ盛りの多い料理をますます食べられなくなってしまうので、 お茶を飲みます。お茶を飲み、ピーナッツをつまみながら料理を待ちます。


 一品目は前菜の盛り合わせです。 薫魚とユバ巻です。それぞれ前菜として食べる料理ではありますが、私としてはてっきり鎮江肴肉あたりが出てくるものとばかり思っていました。薫魚とは魚の燻製ではなく、白身魚を揚げたうえで醤油ベースのタレに漬けたもので、佃煮の中国料理版みたいなもので、私は好きです。タレには八角などの香辛料が入っていると思うのですが、それが中国らしい味付けにしてくれているのです。

 
 

 ユバ巻については、 中に炒めた根菜などが入っているところが上海料理風で、薫魚がどちらかというと若干こってり気味ですから、炒めものは挟んでほしくなかったなというのが正直な印象です。私が一人でなく複数で来たのであれば、前菜として薫魚は注文したかもしれませんが、組み合わせる冷菜はクラゲなどのさっぱりした前菜にしたはずです。そういう意味で、前菜盛り合わせが二つとも甘辛い感じの料理になってしまっているというのは確かに上海料理らしいとは言え、食べづらい組み合わせです。

 

 そして、上海料理の定番、紅焼肉です。 今日の一人夕飯のメインディッシュです。紅焼という調理法は醤油で煮込むという意味です。八角、棗や生姜を入れた醤油たれで長い時間煮込まれた肉は柔らかくて美味しいのです。この味付けもいかにも上海料理です。
 一目見た瞬間に感じたことは、肉が少ないということです。それにしても、肉よりも乾豆腐(硬く作られた豆腐)をねじったものが随分と多いですね。乾豆腐はお腹にたまるので、肉を探り出して食べます。

 

 紅焼肉は豚バラ肉のブロックを使いますので、ある程度脂身が多いのは仕方ないし、脂身が多くないと美味しくないことも事実ですが、ここ老上海飯店の紅焼肉は脂身が多すぎる気もします。 味付けは普通の水準の味つけで、とりわけ美味しいというほどでもありません。味覚というのは体調にもよりますのであまり断定的には申し上げたくないのですが、少し食べづらいかなという印象です。前菜の組み合わせの悪さが、メインディッシュを食べづらくしていることも否めません。

 

 結局、この日注文した中で最もすっきりした味だったのが小籠包です。ご飯代わりに注文したのですが、これは上海で食べた上海料理の水準に達しています。薄い皮の中にたっぷりのスープが入っていて、 このスープが絶品です。前菜と紅焼肉で油っこさを感じたら小籠包を食べたりお茶を飲んだりして、食欲が減退するのを何とか防止したわけです。
 しかし、以上の料理で300香港ドルくらいとるようなレストランで、小籠包が一番美味しかったという印象になってしまうということは、やっぱりこのレストランもおすすめできないということです。美味しい小籠包を食べるだけなら、香港でも粥麺店に毛の生えた店でも十分に満足できるからです。
 香港に美味しい上海料理レストランはないのでしょうか。次回は、私が当時最も気に入っていた雪園飯店に行ってみたいと思います。



上海らしい名物料理を紹介します


 上で紹介した老上海飯店には一人で食べに行ったものですから、香港で上海料理を食べようとしている方には参考にならなかったと思います。そこで、上海など華東エリアで食べた記録から、上海料理レストランでのおすすめ料理をいくつか紹介します。

 日本人が上海料理として一番に思い浮かべるのは上海蟹(大閘蟹)でしょう。上海蟹の中でも最上級は陽澄湖産のものですが、上の写真の蟹はまさにそれです。

 
 上海蟹のシーズンは10月から12月くらいです。シーズンさえ合えば、上海蟹も悪くはないと思います。中国では比較的安価に食べられる上海蟹ですが、香港の一流レストランですと日本並みかそれ以上の値段になってしまいます。実は、香港の一流レストランでは上海蟹の中でも最上級のものを提供している場合が多いのです。一方で、日本人が上海蟹を大好物になるかというと必ずしもそうではなくて、「あまり食べるところがないね」という反応が殆どです。中国人は上海蟹をしゃぶるように食べて楽しむのですが、日本人の蟹の食べ方は身をほぐして食べるわけですから、そもそも食べ方が違うのです。
 したがって、上海蟹については、よほどの通の方にはおすすめしますが、香港グルメとしてはあまりおすすめしていません。むしろ香港の隣にある深圳まで行った方が良いのではと思います。上の写真は深圳にある上海料理レストラン、江南厨子で食べた上海蟹です。
 本場の上海蟹を食べたい方なら、やはり大閘蟹の産地である蘇州の陽澄湖に行った方が良いでしょう。

鎮江肴肉は上海料理で定番の前菜

 上海料理の冷菜というと、クラゲとか老上海飯店で食べた薫魚とかもありますが、私が好きなのは鎮江肴肉、豚もも肉の塩づけハムです。肉が腐ってはいけないので塩漬けして保存していた頃からの伝統料理です。この塩漬け肉を1~2日くらいの間、生姜、胡椒や八角などと一緒に煮込んで作ります。上の写真は深圳の江南厨子で食べたものです。鎮江は、蘇州から長江(揚子江)に沿ってさらに南京方面へ行ったところにある街で黒酢の産地としても有名ですが、その黒酢をつけて食べます。少し塩気が強く油っぽいくらいの味が私は好きです。


  続いて蟹黄鶏汁煮干絲です。玉子そばみたいに見えますが、そばのように見えるのが干し豆腐の細切りで、玉子みたいに見えるのが蟹黄スープです。蟹がふんだんに使われている贅沢な味で、しかもあっさりしていて旨いです。連日の中華料理であまり空腹感がない中での夕食であっても、これなら食べられます。この干し豆腐(干絲)を使った料理は、上海に近い揚州で始まった料理と聞いていますが、もう既に上海料理では定番料理の一つです。普通に煮込んだ煮干絲もあっさりした味でおすすめです。

 

 中華料理でスープと言うと、多くの日本人はすぐにふかひれスープになってしまうのですが、中華料理には美味しいスープがいろいろあります。
 上の写真は宋嫂魚羹というスープで、杭州名物です。本来は杭州の西湖の幸を使ったスープですが、これまた上海料理の定番の一つです。これも美味しいのです。「羹」という字はとろみスープを意味していて、魚の入ったとろみスープです。実際には、桂魚の身、中国ハム、シイタケ、ネギ、ショウガなどが、とろとろのスープの中で煮込んであり、酢が味を引き締めています。

 
 
 また、スープ代わりに頼めるものに、五目煮込み(砂鍋)があります。庶民のスープですが、これがまた、癖になる美味しさです。家族で上海料理を食べるときは、どうしてもこの砂鍋を注文してしまいます。そのくらい旨いスープなんです。



 杭州・知味観の龍井蝦仁

 上海料理はエビを使った料理が豊富ですが、最も上海料理らしいのが 杭州料理の定番、龍井蝦仁です。上海料理の蝦料理に清炒蝦仁という料理がありますが、これはムキエビを炒めた料理で、これはこれでさっぱりして蝦のうまみが味わえる私の好物の一つです。
 龍井蝦仁は、この清炒蝦仁に作り方は似ていて、ムキエビを龍井茶(茶葉だけでなく、お湯も一緒に炒めるケースが多いと聞きます。)と一緒に炒めた料理です。良い店では、季節が合えば(4月~5月)、龍井茶の新茶を使っていますので、龍井茶の香りが一段と良くなります。杭州は中国の高級緑茶である龍井茶の産地ですからね。龍井茶の香りがほのかに沁み込んでいて蝦のうまみと素晴らしいハーモニーです。また、蝦のプリプリした食感もたまりません。

 
 
 同じムキエビを使った料理で蟹粉蝦仁という料理もおすすめです。他に、蟹粉を使う料理を注文しない場合には、これなんかもおすすめです。

杭州・知味観の蟹粉豆腐 
 
 ただ、蟹粉を使う料理としては、蟹粉豆腐がおすすめですので、これと味付けがかぶってしまうのです。だから、上海料理を食べなれていない方には、私としては定番料理である龍井蝦仁と蟹粉豆腐を注文した方が良いと思うのです。蟹粉豆腐も味付けがさっぱりしていて日本人向けです。

 蘇州・松鶴楼の松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)

 上海料理で魚というと、川魚が主体になります。白身魚の甘酢あんかけみたいのが主流です。最も有名なのは、蘇州・松鶴楼の松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)です。
 どうですか、この見事な盛り付け。桂魚は川や湖沼にいる淡水魚で、中国では淡水魚の王様といわれています。これに衣を付けて熱い油に入れて強火で揚げて、反り返った形や揚げられた外見が、まるでリス(松鼠)の尻尾のように見えることから、その名が付いたと言われています。大変に手の込んだ盛り付けです。
 そして、味ですが、揚げ方にも特徴があるのか、表面はサクッとしていますが、中の桂魚はふんわりと柔らかく揚がっていて、ちょっと甘めのタレも淡白な魚の味に馴染みます。
 
この松鼠桂魚も上海料理レストランならどこもメニューに入っていますので、ぜひご賞味ください。

 

 では、上海料理の肉料理はどうかと言うと、先ほど紹介した紅焼肉が定番で、上の写真の 東坡肉も有名です。東坡肉は脂身のある豚肉をトロトロになるまで、醤油漬けで長時間煮込んだ料理で、見た目ほどには脂っこくないので、私は好きです。これは杭州料理です。私の家族も杭州に来ると東坡肉を食べたがります。東坡肉という料理名にも謂れがあります。
 西湖を舞台にした詩を書いている蘇東坡は、宋の時代の杭州地域の太守(首長)でした。蘇東坡は西湖に蘇堤を作ったことでも名を残していますが、こうした工事に関わった労働者たちの労苦に報いるために、太守であった蘇東坡が振舞った料理がこの豚肉煮込みで、おいしいので大変評判になったとされています。そして、その料理に蘇東坡の名前をつけ、「東坡肉」と言われているわけです。
 そんな歴史の重みを感じながら食べると、ますます旨く感じます。東坡肉は日本でも知られている数少ない杭州料理の一つですね。


 豚肉料理で忘れてならないものに。豚ひざの煮込みがあります。実はかつて、これを食べることを目的に、上海料理レストランに通ったものです。上海料理は蟹が有名ですが、
 この料理は一日以上煮込むものですから、かつては前の日に注文しないと食べられなかったのですが、最近では作り置きしているのか、その場の注文でも大丈夫です。とにかく、やわらかい。美味い。とろけるような味です。そして、ボリューム一杯の料理です。栄養の片寄りのないように、野菜も一緒に食べてくださいね。
 写真のピントが合ってないので、あまり旨そうに見えないでしょうか。


 美味しいので、アップで写真を撮ってしまいました。豚の膝肉の煮込みなどというと大変脂っこいものを想像されるかもしれませんが、それほど脂っこくもなく、とにかく旨いのです。豚のひざの周りの肉が、本当に柔らかく煮こんであります。絶品だあ。よだれがだらだらになりそうです。
 機会があれば、ぜひ召し上がってください。量も多いので若い方向きかも知れません。

 揚州・冶春茶社の本場の揚州炒飯
 
 さて、メインディッシュの後に、チャーハンか焼きそばを食べたくなるのが日本人です。私もかつはそうしていました。でも、今では、白飯をもらって、蒸しガルーパとかおかずとかをかけて食べるようになりました。それで十分満足できるからです。でも、中華料理を食ったら、やっぱりチャーハン、ヤキソバがなきゃ、という人のために、ちょっと紹介しておきましょう。
 中国では、チャーハンと言えば最右翼は揚州炒飯です。いわゆる玉子チャーハンです。中国で初めて炒飯に卵を絡めたのが揚州出身の調理人だったそうで、その出身地をとり、これを揚州炒飯と呼ぶようになったと聞いています。日本で食べる炒飯の多くも、この揚州炒飯が原型です。
 先ほども書いたように、揚州は上海にほど近い場所にあります。上海料理レストランで、日本のチャーハンの原型にトライするのも良いでしょう。


 そして、上海料理で最後に麺類を頼むのでしたら、迷わず上海炒麺を注文してください。日本人の感覚からすると、うどんのような太い麺です。結構美味しいですね。上の写真の通り、こんな感じで太目の麺です。
 香港・中国で炒麺を食べるときは、この上海炒麺もそうなんですが、日本人にとってはかなり油っこいと思いますので、酢をかけて食べると食べやすくなります。酢をかけて食べやすくすれば、きっと気に入ってもらえる焼きそばだと思います。