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アジアグルメ図鑑-揚州、富春茶社の揚州点心


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揚州料理の老舗、富春茶社

 准揚料理という中華料理の種類を聞いたことがあるでしょうか。気候や素材が地域により異なる中国では地域ごとにその地に適した料理が発達していたのですが、准揚料理は広東料理や四川料理などと並んで、准揚地区で発達した料理法で、中国人ならたいていは知っている料理法です。ここで言う准揚地域の中心地が揚州です。
 日本ではあまり知られていない揚州、そして准揚料理ですが、中国料理の本を紐解くと、これが北京の宮廷料理に強い影響を与えたとか、上海料理や杭州料理など江南の料理の本流であるなどと書かれていますし、私などは広東料理に相通じるものもあるという印象も持っています。揚州は海に比較的近く、また、河川・湖沼に恵まれ、肥沃な土地で農作物も豊富なだけに、素材の味を生かした料理が一つの特徴です。
 その揚州では、宮廷料理系とは別に小吃(軽食)も長い歴史を持っていて、なかでもここで紹介する富春茶社は隋の時代から延々とその味を守っている老舗です。揚州市内は再開発が進んでしまっているのですが、かろうじてここ国慶路周辺は、昔の揚州の街並みが残っていて、富春茶社はその国慶路から路地に入ったところにあります。上の写真は国慶路から路地に入るところの写真で、ここに大きく富春茶社の看板があります。

揚州点心の老舗、富春茶者

 富春茶社の入口です。富春茶社は隋の燿帝の時代から包子(日本で言えば肉まん、あんまんの類のまんじゅう)で知られた名店で、写真の六角形の建物が入口で、その裏の建物数棟が富春茶社というレストラン、食堂です。とにかく広い店です。


 入口の建物内は、新しいだけあってモダンです。富春茶社で食事をしたりお茶を飲んだりする場合はここは通り抜けて、奥の建物へと進みます。
 私が富春茶社に行ったのは、朝の7時過ぎです。ここでは、点心は朝のうちしか食べられないという話を聞いていましたので、朝食を食べに来たわけです。

揚州点心の富春茶社の店内

 富春茶社の店内です。既に沢山のお客さんが入っていますが、地元の方に混じって、中国の別の地域から来た観光客らしい姿もちらほらあります。一方、日本人を含めて外人さんの姿は見当たりませんでした。揚州は、上海からでさえ新幹線とバスを乗り継いで3時間くらいかかりますから、交通の便が今一つですので、なかなか外人観光客は来づらい街ですし、朝食をホテルで済ます観光客が多いからかもしれません。最近は北朝鮮の金正日総書記が揚州に来ていましたが、さすがに富春茶社には足を伸ばしていないと思います。
 さて、富春茶社ではこういったテーブルでの相席になります。香港で飲茶をするときも老舗の飲茶屋さんでも、同じようにテーブルは相席です。香港では相席のテーブルに座っていればそのうち飲茶屋さんの小姐がお茶の注文など取りに来るのですが、この富春茶社が香港の飲茶屋さんと違うのは、小姐はお茶の注文など取りに来ませんし、飲茶を売るワゴンや点心の注文ペーパーなどもないことです。この店では食券制になっているのです。

 
揚州、富春茶社のメニュー

 さて、富春茶社での注文の仕方です。店に入ったら席を確保し、レジで注文をします。レジの後ろに写真の通り価格表が出ていますので、これを見ながら注文します。朝はセットになっていて、35元から18元の4種類から選びます。右上にはこの店の名物料理である湯包を単品で注文した場合の価格も出ています。
 ここでセットを選ぶコツですが、この富春茶社の看板メニューである富春湯包(蟹粉湯包)と五丁包は外せません。そうなると、30元のセットか35元のセットでなければなりません。前回来た時は一番高い35元のセットを注文した私ですが、今日は連日の食い過ぎで量を減らしたいとの同行者の申し出もあり、30元のセットと5元のお茶を注文しました。




 お茶が出てきました。5元のお茶ですから、特級品のお茶です。茶社というのはそもそもお茶を飲むところですので、5元出すと良いお茶が飲めます。香港や広州の飲茶も、もともとはお茶を飲みながら、家族や友人とおしゃべりしたり、本を読んだりして、くつろぐ店です。そのついでに点心をつまむのです。日本人が飲茶に行くと食べることに夢中になりますが、今でも香港人や広州人はお茶を楽しみながら思い思いに飲茶屋のひと時を楽しんでいます。
 因みに、左の容器には酢が入っています。

富春茶社の湯包。揚州点心の真髄。

 まず最初に湯包が出てきました。富春湯包と店の名前が付けられた湯包です。これが意外に大きいのですが、隣の箸と比較して大きさのイメージが湧くでしょうか。湯包は、読んで字の如く、スープ饅頭です。(「包」は饅頭の意味です。)

富春茶社の湯包とストロー

 湯包の食べ方ですが、テーブルの上に小さいストローがあるので、これでチュッチュッと吸っていきます。湯包の中には蟹粉がたっぷり入った熱々のスープが入っています。これが旨いのなんのって、上海や台北で食べる小籠包のスープがおいしいなどと言っている人にはぜひ食べさせたい料理です。実は私も上海の南翔小籠包が大好きなのですが、それとは比較にならない旨さ、そして大きさです。
 この料理を食べるのに難しいのは、地元の人のようになかなか最後までスープを吸いきれないところです。結構吸って吸って吸いまくってそろそろ吸い終わったかと思って、湯包を口に入れようとしたら、残っていた湯包のスープがこぼれて「おっと勿体無い」という気になってしまいます。すかさず小姐にお碗をもらってお碗に湯包を入れたら、意外に沢山のスープが残っていました。最初からお碗がテーブルにでもあれば良いのですが、お碗は小姐にもらわないと出てきません。湯包はチュルチュルと飲むのが流儀のようで、お碗に移している人など、私以外には全くいません。でも、日本人にとってはお碗をもらったほうが食べやすい料理ですね。

揚州・富春茶社の麺

 そうこうしているうちに、蝦仁煨麺が出てきました。「煨」とは、とろ火で煮込むという意味の字ですので、煮込みそばです。鶏肉をベースにしたラーメンで小さなお碗に入って出てきました。
 私がよく日本で行く中国料理屋(中華料理屋ではなく中国の本場の味の料理を出すレストラン)で鶏煮込みそばというメニューで出している麺の味付けに似ていて、麺は太麺で煮込み用の柔らかい麺です。蝦も入っていましたが、私の印象としては、鶏煮込みそばの味です。でも、旨いです。暖かいうちに食おうと思って勢い良く食べたら、一口、二口で食べ終わってしまいました。旨いので、もっと食いたい気になります。

揚州点心は広東点心の原型(揚州・富春茶社)

 そんなわけで、最初にチュルチュルと湯包を食べて、と言うか、湯包は中に入っている蟹粉スープが売りなのですから、湯包を飲んでと言うべきなのかもしれませんが、飲み終わるか終わらないうちに、蝦仁煨麺が出てきて、そして、今度はお待ちかねの点心セットが出てきました。
 翡翠焼売、千層油糕、海鮮餃、ゴマ饅頭などが入っています。

揚州点心は広東点心の原型(揚州・富春茶社)

 これは点心セットに入っていた翡翠焼売です。もち米(糯米)を炊いて餡にして焼売の皮の中に包んだものです。この手の焼売は蘇州でも食べましたが、お腹にはたまりますが私はあまり好きではないですね。
 


包子(饅頭)は揚州点心の名物(揚州・富春茶社)

 さすがは包子で有名な富春茶社です。包子がドーンと出てきました。五丁包、蟹黄包と野鴨菜包です。富春茶社の包子は中に入っている餡もさることながら、包子自体に甘みがあって、また、柔らか味が適度で素晴らしいのです。感動です。
 香港や広州では包子は点心の主役ではありませんが、ここ揚州では包子の旨さが店の人気を左右します。何と言っても、隋の時代からの長い歴史を持った揚州点心は、包子の味をさらに極めてきました。香港や広州の点心が味の追求に加えて、例えば様々な焼売や餃子・粉果といったバラエティに富んだ品揃えや見た目の美しさも求めていったのとは違う展開で発展してきているのです。

三丁包(饅頭)(揚州・富春茶社)

 五丁包は鶏、豚、筍(以上の3種類を入れた包子を三丁包と言います。)と海老とナマコを刻んで入れた饅頭で、私にはこれが一番旨かったという印象です。日本だと、やれ肉まんだ、豚まんだ、などと騒いでいますが、この5種類の素材をミックスした饅頭が隋の時代に既に食べられていたということには驚きです。

揚州・富春茶社の蟹黄包

 蟹黄包です。蟹の味が饅頭に染み渡っていて、旨いのなんのって、蟹黄包は私のような蟹好きの人間にはたまらない旨さです。

揚州・富春茶社の野鴨菜包

 野鴨菜包も酸味があって旨いですね。こんな風に、同じ包子であっても、餡が色々で味わいが異なりますから、食べていて全く飽きないというか、新しい味の発見に刺激されまくる状態です。日本のように、中華饅頭といったら肉まんかアンマンになってしまうところとは違います。

揚州点心

 これは揚州点心の一品、千層油糕です。薄い皮が何枚も重なっている点心で、見た目にはパリパリした皮に見えるかもしれませんが、食べてみると意外にふんわりとした皮です。勿論、中には何も入っていないのですが、この皮自体がほのかな甘みを持っていて、おいしい点心(甜品)です。恐らく、この千層油糕で使われる皮は、包子の皮と同じ素材・同じ味付けだと思います。皮を幾重にも重ねていますので、なかなか手の込んだ一品です。


 そして、もう一つ甘い点心は双麻酥餅(ゴマ饅頭)です。点心の入った蒸篭を見ると、包子の間にちょっと小さめの饅頭が入っていますが、そのちょっと小さめの饅頭がこの双麻酥餅です。これは結構本格的に甘い点心です。いかにも中国の甘い饅頭です。



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 この30元の点心セットは、富春茶社の名物料理を一通り経験させてもらえますし、流石に腹いっぱいにさせてくれます。質的にも量的にも満足させてくれるセットです。私でも腹いっぱいになりますので、間違ってもホテルで朝食をとった上で来ることのないようにしてください。
 外に行くと、その点心セットが売られています。持ち帰りも可能なのです。


 もう一回、満足した朝食を自分の頭の中で反芻しながら点心の入った蒸篭を見ます。もう一回食べたくなってしまいます。さすがにここ富春茶社の包子は旨かったなと、記憶が蘇ります。
 この翌日の朝食は、同じ揚州点心で有名な冶春花園に行きました。こちらも素晴らしい朝食でした。揚州での朝の点心はレベルが高いです。




 富春茶社から国慶路に出る路地の両側は、昔ながらの揚州の街の雰囲気が残されていて、観光客を相手にした土産物屋が並んでいます。三巴刀とか刀剪とかいう字が見えますが、揚州土産として最も有名なのは刃物です。ちょっとお店を冷やかしながら、のんびり揚州風情を楽しんでみましょう。


 三把刀というのは、包丁、髪切り用の鋏、修脚のセットです。(修脚とは、足底の角質化した皮膚とか足爪やウオノメとかを薄く削る中国特有の美容法ですが、そのための刃物を言います。)
 こうしたセットを買うのもいいでしょうが、それぞれの刃物をバラで買うこともできます。はさみには髪切り用、園芸用やいわゆる文房具用のはさみなど色々ありますし、修脚のセットにもデザインや大きさの違う色々な種類があります。爪切り用のはさみだけでも色々あります。揚州の土産として鋏や爪切りなどは私のおすすめですが、見るだけでも楽しいものです。


 揚州の点心というと、この富春茶社以外にも、冶春茶社冶春花園などが有名な老舗があるのですが、やはり隋の時代からの味を延々と受け継いでいる富春茶社は別格です。上の写真は、揚州のメインロードの一つ、文昌路と国慶路の交差点あたりに出ている看板なのですが、富春茶社の名前が大きく出ているのです。
 それだけの歴史と味の価値は十分にある店だと私は思います。でも、冶春茶社冶春花園も負けず劣らずの名店ですから、揚州旅行のときはどこで食べたらよいのか本当に迷ってしまいます。



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 作者の南條竹則さんは、高級料理店の料理は日によって味にバラツキが出ることがあるけれども、小吃の味は安定していて旨い店は旨いのだということを書いていますが、これは私と全く同意見です。
 あるときは「小林秀雄の蟹まんじゅう」(これが富春茶社の蟹黄包です。)を求めて揚州の小路に入り込み、あるときは杭州の高級料理店で満漢全席の至福に身を委ねる。中国の千変万化の食文化の魅力にとりつかれた作者の思いが全編にみなぎる力作エッセイです。


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