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アジアグルメ図鑑(上海)-上海グルメ(夕食編) 

アジアグルメ図鑑(上海・中国江南)  アジア写真帳(上海)


上海のグルメ(はじめに、朝食・昼食編)もご覧ください

上海のグルメ(夕食編) ……はじめに

寧波海鮮大酒店の蟹とねぎ炒め
上海・寧波漢通海鮮大酒店の蟹ネギ炒め


 一口に中華料理と言っても、中国へ行けば、どこでも中華料理です。(もちろん、フランス料理や日本料理など各国の名前を冠したレストランは別ですが、……。)上海をはじめ中国でグルメを楽しもうとすれば、それこそ星の数ほどある中華料理屋の中から、自分のイメージしている料理を食べさせてくれるレストランを選ばなければなりません。これは、簡単だけど難しいことです。

広東料理の蔵楽坊店内
上海・蔵楽坊の店内


 何故簡単かといえば、運が「悪ければ」、自分の店の専門外の料理でも、すなわち普段作りなれない料理でも出してくれる店はいくらでもあります。そういう意味で、自分の食べたいものを食べさせてくれる店はいくらでもあります。但し、それらが旨いかと言うと、多くの場合は旨くありません。それはそうです。いくらレストランのシェフと言えども、普段作り慣れないものについて細かな味付けまで天下一品にすることは困難だからです。すなわち、自分の食べたい中華料理に辿りつくことは容易なのですが、本当に美味しい料理に辿りつくのはそれほど簡単なことではなく、むしろ難しいと言ってもいいのです。

蔵楽坊の鶏肉の紹興酒蒸し
上海・蔵楽坊の鶏肉の紹興酒蒸し

 だから、上海で美味しい食べ物にありつくためには、自分で店や料理を選択できる程度に、中華料理に詳しくなっておかなければなりません。例えば、○○という中華料理は、広東料理なのか上海料理なのか四川料理なのかといったことは、当然ながら分かっていなければなりません。
ここでは、ポイントを5点挙げたいと思います。
(1)中華料理の種類・系統を知る
(2)ある程度メニューを解読できるようにする
(3)上海で美味しく食べられる中華料理の種類を知る
(4)メニューの組立ての達人になる
(5)酒はほどほどに
 以上を順を追って説明します。



(1)中華料理の種類・系統を知る

杭州・知味観の龍井蝦仁
杭州料理の定番、龍井蝦仁


 下に料理の特徴や代表的な料理を挙げています。代表的な店はガイドブック等で調べて欲しいと思います。ただ、ガイドブックに出ている店がいい店かというと、必ずしもそうではありません。料金の高い店はなるほど外れが少ないのですが、ただ、それだけのコストを支払うのだったら、よその店ではもっと旨いものが食べられるかもしれません。そんなこと言ってしまったら、ガイドブックを見てくださいなどという言い方は、無責任な言い方になってしまうのですが、そこが上海の難しいところで、実はシェフが変わる、店の場所が変わるなど、変化が激しいところなので、私の現在の知識なんか、すぐ陳腐化してしまうのが上海なのです。だから、「この店は美味しい」と私が書いても、その後にシェフが代って料理が旨くなくなってしまう店もありますし、私が書いた場所から移転してしまう店も少なくないのです。だから、私自身が無責任にならないためには、可能な限り、店の固有名詞は出さないに越したことはないのです。

料理の特徴 代表的な料理
上海料理
 
(
滬菜)
揚子江下流流域で生まれた料理。准揚料理を源流とした料理で、蘇浙料理も同系列。一般的に味付けが濃く、甘辛い料理が多い。湖沼や河川の素材を多く使う。また、醤油漬けした豚肉を焼いたり蒸したりした料理も豊富。上海では小南国の味が安定しており、店舗も多い。 上海蟹(大閘蟹)
紅焼肉

龍井蝦仁
東坡肉
叫化鶏(乞食鶏)
広東料理
(粤菜)
広東省で生まれた料理。香港や広州では一般的。
素材の持ち味を活かした料理が基本。魚やエビなどは海産物を多く使う。フカヒレをはじめとしたスープも豊富。蔵楽坊杏花楼などの名店も多い。
海鮮料理で有名な潮州料理は広東料理の一系列。
フカヒレスープ
白灼蝦

化皮乳猪
清蒸石斑魚
潮州凍蟹
四川料理
(川菜)
揚子江上流の四川省を中心とした中国内陸地域の料理。スパイスを効かせた辛い料理が特徴である。これは、かつて鮮度の高い素材が入らないなか、味付けで工夫した結果である。上海では愉信川菜の四川料理がが美味しかった。 麻婆豆腐
青椒肉絲
回鍋肉
海老チリ
北京料理
(京菜)
北京地域の料理。山東料理を源流としている。広東→上海→北京→四川の順に味付けが濃くなる。その分、素材そのものの味から遠くなる。
宮廷料理は、北京料理の一分類。
北京ダック
木須肉
ジャージャー麺(炸醤麺)
水餃

上海のグルメ(はじめに、朝食・昼食編)おすすめの上海旅行プランもご覧ください

鎮江魚肉は上海料理の冷菜の定番
上海料理の前菜の定番、鎮江肴肉

 それではどういった店を選んだら良いのか。前に書いたことと重複しますが、地元の人で混んでいる店を探したら良いのです。とは言っても、上海に住んでいる人ならともかく、短期間の旅行者にとって、これは結構つらいことです。ただ、とにかく、レストランを見かけたら観察するのです。大人数の家族同士で食べている人が多い店は、結構安くて旨いところが多いのです。自分の舌に合う店が見つかるまでは、そのようにして努力します。失敗も重ねながら、努力して初めて、本当に満足できる「自分の味」に到達できるのです。

揚州料理の定番、燙干絲
揚州料理の定番、燙干絲

 そこまで食に対する執着心はないという方なら、ホテルのスタッフに「○○を食べたい」と言って相談するのも良いと思います。良いスタッフなら大体の予算も聞いてくれたうえで、彼らなりにおすすめのレストランを紹介してくれるはずです。料理の系統が分からなければ、例えばエビのチリソースを食べたいとか紅焼肉を食べたいとか、食べたい料理を言えば良いと思います。そんな時も、蒸しガルーパ(広東料理)と北京ダックと麻婆豆腐を食べたいなどと、料理の系統を無視した要望を出して、ホテルのスタッフを困らせないようにしましょう。

(参考)小吃の地域的な差異

揚州・富春茶社の点心
揚州・冶春花園の点心セットの一部


 餃子・焼売・饅頭といった点心や麺類などのB級グルメは、簡単に食べられるので「小吃(しゃおち)」と呼ばれていて、これもまた地域により特徴があります。

 ここでは、上海と香港・広州、北京など北方の小吃を比較してみます。また、上海に近いのですが、揚州点心は歴史も古く特徴的なので、上海小吃の中で区別して記載します。

料理の特徴

代表的な料理

上海の小吃







揚州の小吃

麺類は細麺の蘇州麺が有名。具と麺を別々に出し、最初は具だけを楽しむこともできる。上海固有の麺は若干太めで、特に上海焼きそばというと日本人の目には焼きうどんに見える。点心は、小籠包や生煎包のように、皮の中にスープが入っているのが特徴。湯包が源流と考えられる。

隋の時代に生まれたとされる中国最古の点心。湯包や包子(饅頭)が中心である。また、中国で最も一般的なチャーハンが揚州炒飯(玉子チャーハン)である。

蘇州麺
上海炒麺
小籠包
生煎包



湯包

蟹粉湯包
三丁包
揚州炒飯

香港・広州の
小吃

香港の麺類はゴムのような麺が主流。
点心は、焼売や餃子・粉果といった蒸し料理が発達し、素材の味を活かしつつ、食べればおいしく見た目にも美しい点心が人気。
米粒がなくなるほど煮込んだ粥も有名。

蝦餃
(エビ蒸餃子)

各種の焼売
潮州粉果
皮蛋痩肉粥

北方や四川の
小吃

麺類なら四川の坦坦麺、北京のジャージャー麺が有名。点心は皮の厚い餃子が主流で、水餃子にして食べることが殆どである。また、北方を中心に小麦粉から作った皮で様々な料理を巻く春餅も有名。

坦坦麺
ジャージャー麺
水餃子
春餅


上海のグルメ(はじめに、朝食・昼食編)おすすめの上海旅行プランもご覧ください

中国語はそんなに難しくありません。
私の経験でも、英語よりはるかに早く話せるようになります。
初歩の中国語ができるだけでも、中国旅行が百倍楽しくなりますよ。



ビジネスのための中国語を勉強するならこちらがおすすめ!


(2)メニューをある程度解読できるようにする


揚州の人気店、盛宴のメニュー

このくらいの単語は知っておこう

【猪】豚肉 【鴨】アヒル 
【鶏】鶏肉 【鴿】ハト 
【鵝】ガチョウ 【牛】牛肉
【牛排】牛ロース 【牛柳】牛フィレ
【蛋】卵 【蝦】海老 
【龍蝦】ロブスタ 【石斑】ガルーパ
 【帯子】ホタテに似た貝
【魚翅】フカヒレ 【田鶏】蛙 

【炒】強火で炒める 
【爆】強火ですばやく炒める
【煎】少量の油で炒め焼く 
【〔火考〕】直火であぶり焼く 
【炸】多量の油で揚げる
【煮】スープに煮込む 
【焼】水分が無くなるくらいに煮込む
 【灼】ゆでる 【湯】スープ 
【鹵】たれにつけこむ
【〔保/火〕】土鍋煮込み
【酔】紹興酒に漬け込む


【片】薄切り 千切り【塊】ぶつ切り 
【末】みじん切り【丁】さいの目切り
 【丸】団子状 【全】丸ごと

 旨い中華料理に出会うためのポイント、その第二は、メニューをある程度解読できるようにすることです。右にメニューで使われる単語をいくつか載せていますが、少なくともこれくらいは分かっていて欲しいと思います。
 でも、これが分かったくらいでは、メニューの解読は2割くらいしかできないことも分かっていてください。最近の旅行のガイドブックにはかなり詳しくメニューの解読法などが載っていますが、あそこまで仮に分かっていたとしても、イメージの違う料理が出てくることがあります。だから、完璧に分かろうとすることは諦めて、ある程度読めるようにすること、使われている素材が分かることくらいで満足すべきだと思います。上海で美味しい料理に出会うためには、むしろ、このメニューの解読より、ここで言う他の4つのポイントの方が重要だと思います。

 上の写真は、揚州で地元の人に人気のある盛宴というレストランのメニューですが、写真もなければ英語表記もない、ましてや日本語も書いていないメニューで、こういう店では漢字から料理をある程度類推する力が必要になるのです。


(3)上海で食べられるおいしい中華料理を知る

上海・小南国の紅焼肉
上海・小南国の紅焼肉


 旨い中華料理に出会うためのポイント、その第三は、上海で美味しい中華料理の種類を知ることです。一般的に、上海で旨い中華料理は、上海料理であると言われています。要は、地元の人々の舌に合った料理を出すレストランというのは、旨いのです。さて、日本人から見ると中国江南地域の料理は「上海料理」に一括りにしてしまうのですが、蘇州料理は上海料理とは少し違いますし、杭州料理もそれらとは違います。さらに紹興に行けば紹興らしい料理になりますし、寧波は海鮮料理が盛んです。ですから、広義の「上海料理」を毎日食べることになっても、狭義には上海料理と蘇州料理と寧波料理を食べるなどといったような工夫をすると食事に変化が出てきます。
 一方で、日本人の口に最も合う中華料理は広東料理だと私は思っていますので、やはり広東料理も一回くらい食べてもらいたいと思います。広東料理は素材の味を大切にします。味付けも良いのですが、何と言っても素材の良し悪しが料理の味を左右してしまいます。ですから、新鮮な素材の出せるレストランを選ぶことがおいしい広東料理に出会うためのポイントです。そうした店は香港ではよくあるのですが、上海には多いのかどうか、私のように上海には出張や旅行ベースで行っている者には分かりません。すると、どうしても老舗の有名店を選ぶようになりがちです。


上海・揚州飯店の蟹粉蝦仁
上海・揚州飯店の蟹粉蝦仁


 そこで参考になるのが、地元の人からの評価です。地元の人に人気のある店というのは、料金が高ければ高いだけの料理を出してくれるという評価があるのでしょうし、料金が安くても安いだけの料理ではないという評価なのでしょうから、店を選ぶ基準はウェブサイトなどでの地元の人の評価が参考になると思います。

   最近私が上海に短期間で行く場合は、このように行きたいレストランを絞り込みながら、広義の上海料理と広東料理を食べようとしています。2泊するなら、上海料理に絞り、地域を代えて(例えば、上海と蘇州)2種類、3泊するなら、これに広東料理を入れる。もう一泊するなら、上海料理をもう1種類を加えたいですね。

チャーハンの定番、揚州炒飯
中国でチャーハンと言えば揚州炒飯


 こんな感じで、出発する前に食べようとしている料理の種類を決めます。それから、毎日のメニューを頭で考えておきます。そうしておくと、旅行に行く前にも上海のグルメを楽しめるし、実際に行ったときには、自分の目指す料理にありつけるというので、一挙両得なのです。旅行の日程をいろいろと考えるのと同様に、食事の場所やメニューも色々と考えるのが、旅行の醍醐味なのです。

 
唐辛子をふんだんに使う湖南料理は激辛です(滴水洞湘菜館)。

 辛い中華料理を食べたいという日本からの旅行者は少なくありません。 辛い中華料理というと四川料理を思い浮かべがちですが、日本ではあまり知られていない湖南料理も、唐辛子をふんだんに使う激辛料理です。滴水洞湘菜館はしっかり辛い料理を出してくれる人気の店ですので、興味のある方は行ってみてください。

管理人が最近読んだ本

中華美味紀行 (新潮新書)

 中華美味紀行という題名の本ですが、内容の殆どがいわゆる小吃(点心や麺類などの軽食)をテーマにしたエッセイです。最近読んだなかでは、一番面白かった本です。
 作者の南條竹則さんは、高級料理店の料理は日によって味にバラツキが出ることがあるけれども、小吃の味は安定していて旨い店は旨いのだということを書いていますが、これは私と全く同意見です。
 あるときは「小林秀雄の蟹まんじゅう」(これが富春茶社の蟹黄包です。)を求めて揚州の小路に入り込み、あるときは杭州の高級料理店で満漢全席の至福に身を委ねる。中国の千変万化の食文化の魅力にとりつかれた作者の思いが全編にみなぎる力作エッセイです。

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(4)メニュー組立ての名人になる

准揚料理の蟹粉獅子頭
准揚料理の蟹粉獅子頭


 第四に、スープ、前菜とか、デザートといったメニューの組み立てです。
 これは、一緒に食べる人数によっても異なるのですが、まず、前菜、これは食べたいですね。それから、スープ、これも捨てがたい。そして、メインディッシュとして何を食べるか、ここが一番のポイントです。料理を何皿頼むのかということも大切なポイントです。中国のレストランでは、一皿あたりの分量が、特に表示されている場合を除き、日本よりずっと多い。倍かそれ以上を想定していいと思います。中国人の注文の仕方を見ていると、注文するお皿の数は、基本は「人数+1」です。3人で行ったら、4皿注文するのが一般的ということになります。デザートはこの数の中に入りません。また、人数が少ない場合は、スープはその枠外で計算します。(スープを入れると、人数+2品になるという意味です。)


蘇州松鶴楼の鎮江肴肉
蘇州松鶴楼の鎮江肴肉

 だから、中華料理を二人で食べに行ってもあまり種類を食べられません。少なくとも4人、できれば6人以上で食べたいところです。
 メニューの組立てとしては、素材が偏らないようにすること、味付けが似たようなものにならないこと、そして、料理の種類[広東料理、上海料理等]の特徴を生かしたメニューにする、などに気をつけて選ぶことが重要です。


上海花園飯店、白玉蘭の化皮焼乳猪(子豚の皮のロースト)
上海花園飯店、白玉蘭の化皮焼乳猪(子豚の皮のロースト)

 まず、前菜。ここは、広東料理だと焼味かな。個人的には、化皮乳猪(子豚の皮のロースト)なんか大好きですね、一緒に食べる人の好みによってあひるのローストになってしまうこともあります。潮州料理だと、鹵水鵝片で決まり。上海料理だったら、クラゲの冷菜や鎮江肴肉をおすすめしたいと思います。


上海・寧波漢通海鮮大酒店の白灼蝦(茹でエビ)

 
 そして、もう一つ前菜のうちに入ってしまうけど、小エビの料理。広東料理と潮州料理では白灼蝦(ゆでえび)、上海料理では清炒蝦仁(むきえびの炒め物)や龍井蝦仁(ムキエビの龍井茶炒め)。この小エビ料理は、上海や香港など海に近いエリアに旅行で行く人には、ぜひ食べてもらいたい。日本のエビよりずっと美味しい小エビを、シンプルな料理だけど、とても美味しく食べることができるということを経験してもらいたいのです。人数の関係で前菜を一つにしなければならないのなら、焼味系をやめて、小エビにすることをオススメしたいですね。白灼蝦(ゆでえび)について言えば、小さすぎず大きすぎずのエビがこの料理では旨いですね。それから、日本人の大好きなエビのチリソースですが、これは四川料理なので、私は好きではありません。辛い料理が苦手なわけではないのです。素材の味を殺してしまうチリソースを海鮮料理に使うこと自体がもったいないと思っているのです。鮮度の落ちたエビならそれでもやむをえないと思いますが、新鮮なエビをそんな食べ方で料理するのは、もったいないのです


大極模様の入った野菜のスープ
大極模様の入った野菜のスープ

 次にスープです。中華でスープといえば、フカヒレスープがあまりにも有名です。確かにフカヒレスープは旨い。だけど、旨いものは高い。そこでなのか、それとは全く関係ないのかは知りませんが、フカヒレと蟹のスープとか、フカヒレとイカのスープだとか、いわゆる純粋でないフカヒレスープが存在します。これだと、フカヒレスープほど高くなく、庶民のお財布でも注文することができます。でも、私の経験上、金をケチってフカヒレと蟹のスープなんか飲むと、やっぱりもう一つ満足できなくて欲求不満になってしまいます。フカヒレはフカヒレなのです。「ごった」フカヒレスープはあまりオススメできないな。
 さて、フカヒレ以外のスープですが、中国のスープはどれも美味しいです。食べなれないフカヒレスープを飲むのも経験としてはいいですけど、それ以外のスープにも挑戦して欲しいと思います。私は殆どハズレに当たっていません。野菜のスープも美味しいですよ。大極模様の野菜スープなんかは見た目も緑と白のコントラストが綺麗で、日本から来た人に好評だったものです。

ご存知、上海蟹
ご存知、上海蟹

 そして、いよいよメインディッシュ。
 上海というと、まず頭に浮かぶのは上海蟹です。いい色ですね。見るからにウマソーです。上海蟹の中でも最上級は陽澄湖のものですが、写真の蟹はまさにそれ。
 上海蟹のシーズンは10月から12月くらいです。日本で上海蟹を食べようと思って値段だけ聞くと4千円も5千円もするので、泣く泣く見送ることはしばしばです。その点、上海では比較的安価に食べられるので、シーズンさえ合えば、上海蟹はお勧めです。ただ、日本人が上海蟹を大好物になるかというと必ずしもそうではなくて、「あまり食べるところがないね」という反応が殆どです。中国人は上海蟹をしゃぶるように食べて楽しむのですが、日本人の蟹の食べ方は身をほぐして食べるわけですから、そもそも食べ方が違うのです。まあ、話の種に食べてみるという感じでしょうか。

杭州・知味観の蟹粉豆腐
杭州・知味観の蟹粉豆腐

 蟹の味や香りを楽しむのであれば、むしろ、蟹粉豆腐の方が良いのかなと思います。そして、メインディッシュは別のメニューから選ぶわけです。蟹粉豆腐はどこの上海料理レストランでもメニューにありますし、季節を問わず食べることができます。そして、おいしい店では、本当に濃厚な蟹粉を楽しむことができるのです。

蘇州・朱鴻興麺館の蟹粉麺
蘇州・朱鴻興麺館の蟹粉麺

 ディナーの話からそれてしまいますが、蟹粉の話が出たので、蘇州麺の蟹粉麺もここで紹介しておきましょう。上の写真は蘇州・朱鴻興麺館の蟹粉麺ですが、これがすこぶる旨いのです。スープはあっさり系なのですが、蟹粉を入れると濃厚蟹ラーメンになります。蟹粉とスープの相性が凄く良くて、私好みのスープになります。札幌や函館などで食べる蟹ラーメンより、ずっとずっと濃厚なスープです。
 麺に蟹粉を絡ませて食べると、これがまた旨い。うーん、絶品の味です。

潮州料理の定番、ガルーパ蒸し
潮州料理の定番、「清蒸石斑魚」(蒸しガルーパ)


 広東料理や潮州料理では、何と言っても、「清蒸石斑魚」(蒸しガルーパ)が一番です。ちょっとした店に行けば、生簀からすくってきて「これでいいか」「○○元だよ」とレストランの人が見せてくれます。こぶり過ぎると味は落ちます。イキのいいやつを選んで欲しいと思います。
 以前は、締めにチャーハンや焼そばを注文していた私ですが、この蒸しガルーパを注文したときは白いご飯も注文して、ガルーパを汁ごとご飯にかけて食べるようにしています。これが最高に旨いのです。

蘇州・松鶴楼の松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)
蘇州・松鶴楼の松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)

 一方、上海料理で魚というと、川魚が主体になります。白身魚の甘酢あんかけみたいのが主流です。最も有名なのは、蘇州・松鶴楼の松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)です。
 どうですか、この見事な盛り付け。桂魚は川や湖沼にいる淡水魚で、中国では淡水魚の王様といわれています。これに衣を付けて熱い油に入れて強火で揚げて、反り返った形や揚げられた外見が、まるでリス(松鼠)の尻尾のように見えることから、その名が付いたと言われています。大変に手の込んだ盛り付けです。
 そして、味ですが、揚げ方にも特徴があるのか、表面はサクッとしていますが、中の桂魚はふんわりと柔らかく揚がっていて、ちょっと甘めのタレも淡白な魚の味に馴染みます。旨いです。


木槌で割って出てくる乞食鶏
木槌で割って出てくる乞食鶏

 さて、メインディッシュとして海鮮もの以外はどうでしょうか。
 まず、語りたいのは叫化童鶏(乞食鶏)です。鶏を蓮で包んで、さらにその周りを粘土でくるみ、強火で焼いたもので、焼いて固まった粘土をお客さんに木槌で割らせるというショー的要素があるだけでなく、割れた粘土の中から、ジュージュー香り豊かに姿を見せる蒸し焼きされた鶏も感動的です。

蘇州・王四酒家の乞食鶏
蘇州・王四酒家の乞食鶏

 こじき鶏は中国江南地域の名物料理ですが、この変わった名前にはこんな謂れがあります。
 清の前期、常熟(蘇州のすぐ近くの都市)で一人の乞食が鶏を一羽盗んだものの、調理道具を持っていなかったため、蓮の葉で包みそれをさらに黄土の泥でくるんで火の中に入れて焼いた。泥が乾いてから割ってみると、蒸し焼きにされた鶏の美味しそうな匂いがあたり一面に漂った。以来、この料理は叫化鶏(叫化」とは乞食を意味します。)と命名され、周囲に広まったというものです。
 確かに、この江南エリアには蓮の花も多いし黄土もありますので、この伝説の舞台、常熟でもできますし、ここ蘇州や杭州といった江南エリアなら、どこででもありえる話です。したがって、今や、叫化童鶏(乞食鶏)は、蘇州でも、杭州でも、そして、上海でも、いろいろなレストランが名物料理として挙げるメニューの一つになっています。
 写真の蘇州・王四酒家のようにおいしい店では、炭火で蒸し焼きがされていて、鶏肉を食べているとほのかに炭の香りがしてきて絶妙な味わいです。鶏肉も上質です。思い出に残る味です。


上海・小南国の紅焼肉
上海・小南国の紅焼肉

 乞食鶏は有名ですが、上海料理で肉料理というと、一般的には豚肉料理に特徴があります。私はカロリーを気にしながら食べているのでどうしても鶏肉を選んでしまうのですが、有名なのは豚肉料理で、その代表的な料理が紅焼肉です。確かに旨いので、食べ過ぎ・カロリーの摂り過ぎに注意が必要です。

杭州料理の定番、東坡肉
杭州料理の定番、東坡肉

 杭州では東坡肉が有名です。
 東坡肉は脂身のある豚肉をトロトロになるまで、醤油漬けで長時間煮込んだ料理で、見た目ほどには脂っこくないので、私は好きです。私の家族も、杭州に来ると東坡肉を食べたがります。東坡肉という料理名にも謂れがあります。
 西湖を舞台にした詩を書いている蘇東坡は、宋の時代の杭州地域の太守(首長)でした。蘇東坡は西湖に蘇堤を作ったことでも名を残していますが、こうした工事に関わった労働者たちの労苦に報いるために、太守であった蘇東坡が振舞った料理がこの豚肉煮込みで、おいしいので大変評判になったとされています。そして、その料理に蘇東坡の名前をつけ、「東坡肉」と言われているわけです。
 そんな歴史の重みを感じながら食べると、ますます旨く感じます。東坡肉は日本でも知られている数少ない杭州料理の一つですね。

周荘名物の万三蹄
周荘名物の万三蹄

 豚肉で同系統の料理で有名なのが周庄(周荘)古鎮の名物料理、万三蹄です。周庄(周荘)古鎮のあちこちで売られています。豚肉の脚の醤油煮込みです。周荘出身で元から明の時代の豪商、沈万三はこの料理を大変好んで食べたようですが、これについても名前の由来を紹介しておきましょう。
 明を築いた朱元璋は、元との商いで大きな富を築いた沈万三を快く思っていなかったため、いろいろな無理な要求を沈万三に突きつけていました。けれども、無理と思えるような要求に対しても、沈万三は財力に物を言わせて実現していってしまいます。ある時、朱元璋が蘇州に来て沈万三が宴に招待した際に、この豚肉の脚の醤油煮込みを朱元璋に食べさせたところ、朱元璋は大変これを気に入って料理名を尋ねたそうです。それまでは「豚の脚(中国語では「猪蹄」といいます。)」と呼んでいましたが、このうち「猪」の発音が朱元璋の「朱」と同じであるため、沈万三は、つまらないことから朱元璋の怒りを買ってはならないと考え、咄嗟に「万三蹄」ですと答えたそうで、以来、この料理を万三蹄と呼んでいるようです。



揚州・冶春茶社の本場の揚州炒飯
揚州・冶春茶社の本場の揚州炒飯

 中華料理で牛肉の料理というと、あまり美味しいのに出くわしません。中国では、鶏・豚、牛の中で、最も人気がないのが牛です。

 さて、メインディッシュの後に、チャーハンか焼きそばを食べたくなるのが日本人です。私もかつはそうしていました。でも、今では、白飯をもらって、蒸しガルーパとかおかずとかをかけて食べるようになりました。それで十分満足できるからです。でも、中華料理を食ったら、やっぱりチャーハン、ヤキソバがなきゃ、という人のために、ちょっと紹介しておきましょう。
 中国では、チャーハンと言えば最右翼は揚州炒飯です。いわゆる玉子チャーハンです。中国で初めて炒飯に卵を絡めたのが揚州出身の調理人だったそうで、その出身地をとり、これを揚州炒飯と呼ぶようになったと聞いています。日本で食べる炒飯の多くも、この揚州炒飯が原型です。
 冶春茶社の揚州炒飯は、至って普通の玉子炒飯です。普通の、全く普通のどこにでもありそうな炒飯に見えますが、これがすこぶる美味いのです。さりげない飾りのないシンプルな玉子チャーハンが、何故こんなに美味いのでしょう。


広東料理レストランなら福建炒飯がおすすめ
広東料理レストランなら福建炒飯がおすすめ

 広東料理店では、揚州炒飯もありますが福建炒飯がおすすめです。チャーハンの上にあんかけの具がたっぷり乗っているので、お椀に分ける前にこれをよくかき混ぜて食べること。私も一時期、福建チャーハンにハマリました。香港の旨い店で食べると本当においしいのですが、上海では残念ながらまだおいしい福建炒飯に巡り会っていません。決して不味くて食べられないというほどのひどい福建炒飯なのではありません。
 日本ではあまり食べられない福建炒飯ですから、上海で広東料理レストランに行ったらぜひ試してください。

上海焼きそばは太麺が特徴
上海・豫園にある緑波廊餐庁の上海焼きそば

 焼そばなら、太麺の上海焼きそばで決まりです。見た目は脂っこそうですが、見た目ほどには脂っこくありません。ということは、やはり少し脂っこいのですが、鎮江名産の黒酢をかけて食べると脂っこさが消えておいしく食べることができます。酢をかければ、どこのレストランでもおいしく食べられます。
 くれぐれも酢をかけることを忘れないようにしてください。

上海・蔵楽坊のマンゴープリン
上海・蔵楽坊のマンゴープリン

 腹一杯になったところで、デザートの注文です。私はさっぱり系のデザートが好きです。西米露とかマンゴープリンといった類のものです。甘い系統だと、潮州料理の水晶飽あたりは好きです。潮州料理は全体的にあっさり目なので、こういう甘いものでも私の胃が受け付けるのだと思います。逆に、広東料理とか上海料理のデザートとしては、さっぱり系が欲しくなるのは、料理が潮州料理に比較すると脂っこいからなのかもしれません

 無難なのは、やはりマンゴープリンではないでしょうか。上の写真の蔵楽坊のように、お洒落でかわいいマンゴープリンもありますよ。

(5)酒はほどほどに

私も紹興酒は大好きなのですが、‥‥
私も紹興酒は大好きなのですが、‥‥

 最後に、飲み物です。せっかく本場の中華料理を食べるのですから、ビールで腹一杯にならないようにしたいものです。また、舌の感覚を鈍らせないためにも、あまり大酒をくらってはいけません。勿論、食前酒程度に飲むのは、むしろ胃の働きを刺激してくれるので良いと思います。ただ、酒は控え目にして、その後、お茶を飲みながら食べた方が、私は美味しく食べられると思う。折角の上海グルメです。十分に味わって食べて ください。因みに、私は酒が大好きな人間なのですが、……。


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アジアグルメ図鑑(上海・中国江南) アジア写真帳(上海)


アジアグルメ図鑑(上海・中国江南) メニュー

このサイトでは上海のレストランで食べた料理を紹介しています

上海のレストラン 飲茶・点心 上海らしい小吃
生簀でシーフード素材を選ぶ
寧波漢通海鮮大酒店
李鴻章ゆかりの地
丁香花園の申粤軒で朝飲茶
小龍包で有名な南翔饅頭店
洋館で広東料理、蔵楽坊 丁香花園申粤軒で飲茶を満喫 南京東路の泰康湯包
小南国 新天地店 南京路の新雅粤菜館で飲茶 蘇州ラーメンの滄浪亭
南京路の揚州飯店 香港の名店、満福楼 上海でもスイーツは満記甜品
花園飯店、広東料理の白玉蘭 老舗の杏花楼 豫園近くの西施豆腐坊
豫園の緑波廊餐庁 虹口の美味しい飲茶、点点心 新天地のカフェ
湖南料理の滴水洞湘菜館 激辛   美味しい小籠包なら佳家湯包 

蘇州、杭州や揚州など、中国江南地域のレストランについてはこちらをご覧ください。



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