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アジアグルメ図鑑-揚州、准揚料理の老舗、冶春花園


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揚州料理の老舗、冶春花園

 揚州の点心というと、どうしても富春茶社の名前が第一に挙がってしまいますが、富春茶社にも劣らない点心の店としては冶春茶社や冶春花園があります。冶春の「冶」の字はサンズイではなくニスイですが、気づかずに「治春茶社」とか「治春花園」だと勘違いしている日本人もいるかもしれません。
 今回の揚州での滞在は二泊でした。朝食は二回食べられますので、一回は富春茶社で、もう一回は冶春花園でと、旅行の計画段階から固く決めていました。冶春茶社という選択肢もあったのですが、冶春茶社ですと、やはり茶社(茶房)という性格上、点心だけになってしまいますので、ちょっと豪華に冶春茶社と同じ系列のレストランである冶春花園を選択していたわけです。
 上の写真の通り、豪華な建物で、この付近一帯が「冶春」として国の保護地域になっています。レストランが開くまでの間、付近を散策してみましょう。

揚州料理の老舗、冶春花園の環境

 冶春花園は川に面して建物や回廊が巡らされていて、風光明媚な場所です。冶春花園のある場所は、清の時代に楊州の八大庭園の一つとされていた冶春の跡地で、清の康熙帝が揚州に訪れたときに川遊び(遊覧)をした舟も、ここ冶春を起点にしています。

揚州の運河と舟

 その康熙帝が川遊びの舟に乗り込んだ場所とされている岸辺には、上の写真の通り沢山の舟が繋がれています。舟の先に見える建物群が冶春花園です。では、岸辺に沿って、冶春花園に向かって歩いていきましょう。


 中国版の屋形船です。と言うか、中国のこうした食事もできる遊覧船が日本に入ってきて屋形船になったのでしょうね。確かに、何人かで揚州に旅行に来たならば、こんな舟で川や運河を巡りながら揚州料理を味わいたいものです。
 中国版屋形船にも普及タイプから高級タイプ、超高級タイプというように、何ランクもあるようで、窓ガラスつきや籐椅子形式など、様々な船があります。

 

 これはかなり庶民的な屋形船です。これですと、お茶や酒を飲みながら遊覧するという感じでしょうか。




 そんな具合に、秦の康熙帝の時代に思いを致しながら川沿いの道を歩くと、冶春花園への門(円洞門)に着きます。回廊や建物が清の時代そのままに残されています。なかなかの雰囲気ですね。


 とにかく広い敷地ですので、敷地内には道路があり駐車場があり、車や自転車が走り、回廊も巡っています。右前方の三階建ての建物が冶春花園のレストランのある建物です。


 この時間は朝七時半です。レストランに向かう道からは、点心を作る厨房やそこで働く厨師たちをガラス越しに見ることができます。大きな蒸篭が次々と積まれていくのが見えます。私の食欲もいよいよピークに達しました。では、レストランに入りましょう。


 レストラン、冶春花園の店内です。室内は広く、またゆったりしています。朝7時半過ぎであればこの程度の混雑です。私が帰る8時半ごろになると、席もかなり埋まってきました。



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 冶春茶社富春茶社の場合は入口でメニューを見ながら立ったまま注文するのですが、冶春花園はレストランですので、まず席に案内されて(この時間ですと、どこでもどうぞと言われるだけですけど)メニューを見せられます。じっくりと各コースの内容を吟味して注文することが出来ます。
 メニュー選びのポイントは3つあります。揚州に来たら必ず食べたい料理が3つあるからです。(写真上のメニューは2011年9月現在のものです。)
 一つ目は蟹黄湯包が入っているか。30元のコースには湯包は行っていません。蟹黄包は蟹黄湯包とは違います。これで、30元コースは選択の対象外になります。次に、三丁包は入っているかです。これは、どのコースにも入っています。そして最後に蟹粉煮干絲が入っているかです。これは残念ながら50元コースにしか入っていません。
 となると、ちょっと高いけど、50元コースを選ばざるを得ません。


 朝一番に入りましたので、一人で入ったのですが、半個室のようなスペースで食事をすることができました。相席覚悟で来たのですが、これならゆっくりと朝食が楽しめます。富春茶社や冶春茶社では、どうしても大きなテーブルでの相席になってしまいますので、周りに気を使わないといけなくなるのですが、さすがにレストランである冶春花園は違いますね。(でも、遅く入ると大テーブルでの相席になりますのでご注意ください。)
 今年の5月(2011年5月)に来た時は、40元だったセットが50元に値上げされています。中国のインフレを肌で感じます。これに8元のお茶(揚州の緑茶で緑揚春)を付けて、締めて58元の朝食です。揚州ではちょっと贅沢ですね。
 お皿、お椀や箸には冶春花園の文字が見えます。

揚州、冶春花園のセット料理

 待つことしばらくで、どどどっと小皿料理が運ばれます。そうですね、ここは茶社ではなくレストランなので、こういったものも出てくるのです。揚州でよく食べられている料理が多いようなので、この中から少し小皿料理をご紹介しましょう。

揚州料理の老舗、冶春花園の干し豆腐細切り

 鶏汁燙干絲が出てきました。日本の冷やし中華のように見えますが、麺のように見えるのは干し豆腐を細切りにしたもので、これを鶏がらスープ、乾燥エビ、ごま油や塩などで和えた冷菜です。揚州名物の一つです。さっぱりした爽やかな味付けで、旨いですね。

揚州料理の老舗、冶春花園の鎮江肴肉

 そして、続いて冷菜ですが、今度は豚肉の冷菜です。鎮江肴肉ですね、これ。
 鎮江は、揚州から長江(揚子江)を渡ったところにある街で、上海から揚州に来るときに新幹線からバスに乗り換える街です。日本でも良く知られている鎮江香醋の黒酢が名産です。劉備が孫権の妹である尚香とお見合いした多景楼があったり、劉備と孫権が天下を収められるか石を切ったりした遺跡(試剣石)があることで有名です。
 鎮江肴肉は、豚もも肉の塩づけハムで、私の大好物です。酒の肴としてよく注文しますし、今回の揚州旅行でも1回は食べたいとしていた料理です。ここ冶春花園の鎮江肴肉はさすがに本場に近いだけあって、ガツンという味です。肉の旨さが違います。鎮江香醋の黒酢をつけて口に入れれば、とろけるような味わいが広がります。1枚だけしか出ないのは、ちょっと残念です。

冶春花園の美味しい揚州料理

 そんな感じで、多種多様な前菜を楽しんでいると、いよいよ料理が出てきました。
 まず、蟹粉湯包です。まさに揚州点心を語るときに外せない一品で、大きな皮の中に蟹粉のスープが入っています。上の写真でお椀の大きさと比べてもらうと良いのですが、お椀の1.5倍くらいの大きさの湯包です。

揚州料理の老舗、冶春花園の湯包

 湯包にはストローも付いてきますので、ストローを突き刺してチュルチュルと蟹スープをいただきます。熱々のスープ、スープ一杯の蟹粉、……、旨いです。至福の時間です。この贅沢な味をしばし楽しみます。
 何と言ってもこれだけの大きさの湯包ですから、ストローでチュルチュル吸ってもなかなか飲み終わるものではありません。でも、全体が皮に包まれていますので保温性が高いのか、なかなかスープが冷めないところも驚きです。



揚州料理の老舗、冶春花園の揚州点心

 湯包をチュルチュルしていると、今度は蒸篭に入った点心セットが出てきました。
 揚州名物の包子は三丁包、野鴨菜包、豆沙包の三種類が入っています。これに、冶春蒸餃とこれまた揚州名物の千層油糕もあります。

包子(饅頭)は揚州点心の主役

 まず、三丁包です。揚州点心の主役は包子です。香港や広州の点心では脇役にしか過ぎない包子は、揚州においては完全に主役です。包子の旨さの差が店の人気の差に直結します。揚州の包子は、その店その店の伝統の皮で包んだ逸品ぞろいです。皮自体の味も各店が競っていて、そうしたなかで味が切磋琢磨されてきているのです。日本で食べる肉まんのように、○○の肉まんは「肉が多い」とか「ピリッと辛味が効いている」とか、そんなレベルで競争しているのではありません。包子自体の皮のほんのりした甘さや、三丁包の餡の隠し味をどうするかといったレベルで、その店の伝統を守りつつ、お客さんの嗜好の変化に対応してきているのです。


 三丁包を二つに割ってみました。三丁包は、鶏、豚とタケノコを賽の目切りにして餡にした包子(まんじゅう)で、滋養強壮にも良いとされている揚州名物です。中国では漢方の考え方により、食生活と健康が結びついていますので、旨くて健康に良い食べ物が今でも好まれます。
 どうです、おいしそうでしょう。実際に美味しいのです。ここ冶春花園の包子ですが、富春茶社の包子よりもやさしい甘みやふっくら感もあって、私には合います。


 今度は野鴨菜包を二つに割ってみました。これがまた、さっぱりした味で旨いのです。日本で肉まんや豚マンに夢中になっている人に食べさせてあげたくなる饅頭です。私の胃がもっと大きければ、もう一つ食べたくなるようなそんな美味しい饅頭です。


 そして、豆沙包、いわゆるアンマンです。中国のアンは月餅でよく食べるのですが、甘さが適度で食べやすいものが多いと思います。ここ冶春茶社のアンマンも合格です。
 饅頭が3つあると、さすがにお腹が一杯になってきますが、味が異なる組み合わせが食欲をそそるのだと思います。また、やはり、包子自体の皮のほんのりした甘さ・旨さが違うのでしょうね。



冶春花園の蟹粉煮干絲(揚州)

 点心を食べていると、最後の一品、蟹粉煮干絲が出てきました。同じ干絲(干し豆腐の千切り)でも、さきほどは燙干絲(和えた料理)、今回は煮干絲(煮た料理)です。しかも、今回は鶏がらスープにたっぷりの蟹粉を入れて煮てあります。これで旨くないはずがありません。もう、前菜から始まって、湯包でスープをしっかり飲んで、包子を食べたり蒸し餃子を食べたり、お腹がほぼ一杯になってきているのですが、これは旨くてやめられません。
 豆腐は沢山食べてもお腹は膨れない、太らないとは言いますが、さすがにこんなに旨いものを最後の方に出されると、貧乏人の私としては食べ残したくないものですから、お腹が一杯になっても完食してしまいました。


 さて、お腹が十二分に一杯になったところで、デザートです。
 まず、点心セットの蒸篭にあった千層油糕です。これも揚州名物です。
 横から見るとカステラみたいにも見えますが、実は一枚一枚の薄い皮が幾重にも積み重ねられている点心で、上から一枚一枚はがすこともできそうに見えます。ほんのり甘く柔らかいお菓子で、食後のデザートに最適です。


 そして、最初の前菜セットで運ばれてきていたゴマかけ酥餅(ゴマ饅頭)と、最後に運ばれてきたスイカで朝食を締めようと思います。
 ゴマかけ酥餅(ゴマ饅頭)は、例によって激しく甘いのでこれを先に食べます。そして、スイカを一切れいただくとちょっと胃腸が和みます。仕上げにお茶を飲んで、今日の楽しい朝食は終了です。完食しました。大変満足しました。本当に旨かったです。
 揚州の朝食というと、富春茶社があまりにも有名で確かに良い店なのですが、この冶春花園はそれ以上の満足を私にくれました。感動しました。



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 作者の南條竹則さんは、高級料理店の料理は日によって味にバラツキが出ることがあるけれども、小吃の味は安定していて旨い店は旨いのだということを書いていますが、これは私と全く同意見です。
 あるときは「小林秀雄の蟹まんじゅう」(これが富春茶社の蟹粉湯包です。)を求めて揚州の小路に入り込み、あるときは杭州の高級料理店で満漢全席の至福に身を委ねる。中国の千変万化の食文化の魅力にとりつかれた作者の思いが全編にみなぎる力作エッセイです。


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