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胡同で四合院見学-アジア写真帳(北京)

(1998年11月29日以来)

胡同で四合院見学-アジア写真帳(北京)Beijing


 北京は中国の首都であり、歴史的な遺産も沢山あります。故宮、万里の長城ではそのスケールの大きさに度肝を抜かれ、頣和園ではその度肝を抜かれる贅の尽くし方に唖然とさせられます。
 そんな見所いっぱいの北京ではありますが、街角ウォッチャーの私としては、昔ながらの北京人の暮らしが凝縮された胡同もまた、北京での見所の一つです。2時間程度の時間を作って、ぜひ、胡同の中を三輪車(人力車)を借り切って回ってもらいたいものです。


 三輪車での胡同めぐりのスタートは什刹海周辺です。ここで三輪車の時間借り交渉をして胡同一帯を回ってもらうのです。2時間あれば、胡同の見所はある程度見て回れます。
 上の写真は什刹海周辺の路地です。四合院が並ぶ胡同らしい場所です。




 胡同とは北京市内にある狭い路地のことです。胡同の歴史は元の時代から始まっていて、それぞれの胡同には、元、明、清の時代からの街並みが偲ばれます。胡同は旧北京城の北部、すなわち、什刹海や鼓楼の周辺一帯に多く見られますが、王府街などの繁華街の周辺にも存在しています。
 胡同にある主要な建物はほとんどが四合院と言われる伝統的な建築様式です。四合院では、中庭を囲むようにして東西南北の四面に部屋が対称的に並んでいます。この南北を軸として対称的に建物と庭を配置するという様式は、中国の伝統的な礼儀や道徳観に起因しているそうです。このように四合院が南向きに建てられているので、胡同が東西方向に走ることになるのです。
 四合院は元の時代に建てられ始めた建築様式ですが、現存している四合院の大多数は清の時代以降に建てられたものだそうです。


 四合院は住んでいる人の社会的な地位によって、広い四合院もあれば、狭い四合院もあります。高官や豪商の四合院は規模が大きく、回廊があったり、中庭以外にも前庭や後庭をがあったりして、いわゆる庶民の四号院とは形態が異なります。
 今回見学した四合院は、いわゆる一般庶民の四合院です。20元の入場料を払って見学開始です。


 胡同の四合院の中です。四合院というのは、読んで字の如し、四つの建物が合わさった建物です。正しくは、「合」という字は取り囲むという意味ですから、四つの建物に囲まれた建物という意味です。一つの四合院は一つの世帯で利用されていました。老夫婦、若夫婦、そして子供たちが、建物は別々でしたが四合院という一つのユニットの中に住んでいたわけです。
 その4つの建物に囲まれるように中庭が必ずあるのが四合院の特徴で、日本の家であれば主として南側に庭があるのですが、四合院の場合は建物に囲まれた中庭が家族のくつろぎの場所、安らぎの場所なのです。
 四合院で外に通じているのは門だけで、一般的に胡同に面して窓はありません。したがって、門を閉めてしまえば、四合院は外の世界と遮断されます。四合院に住む人はあまり隣人とは行き来せずに、家族という小さい社会で暮らしていたようです。こうした世間との接触を避け、もめごとに巻き込まれないような暮らしぶりは、戦乱や混乱が多い北京の街で、人々が安心して暮らすための一つの知恵とも言えるのではないでしょうか。


 上の写真のように、家族みんながかわいがっている小鳥などは、当然中庭にいますし、家族がくつろぐ椅子やテーブルが中庭にあって、家族が語らうことができるようになっています。日本なら、犬小屋を置くのもこの中庭ということになるのでしょうね。
 因みにこの女性はこの四合院の娘さんで、庭で暇つぶしでもしているのかと最初は思いましたが、中国語で質問してみたら色々と説明してくれます。英語も達者に話します。質問しないと答えてくれませんけど、一応、仕事としてこの四合院の説明係をしているようです。


 この建物が子供たち用、こっちの建物は共用棟で食堂や台所がありますなどと、説明してくれます。上の写真は夫婦用の建物だったでしょうか。自転車は夫婦用のものだそうです。


 共用棟の中の居間です。毛沢東の写真が張ってあるところが中国らしさを感じさせます。でも、私は何回か一般家庭に招待されたことがありますが、毛沢東の写真を居間の、しかも一番目立つところに掲げている家は初めてです。もっとも私がこれまで訪問した家は広東省など中国南方でしたけれど、やはり北京は違うのでしょうか。


 質素な家具ですが、中国らしい家具が置かれている居間です。長椅子の上に置かれているのは碁盤です。


 中庭には金魚を入れた桶もあります。中国人は、小鳥とか金魚とか小さなペットが好きですね。コオロギの収集家も日本以上に多いと聞きます。
 四合院見学は中国の庶民の生活にも触れられますので、什刹海で三輪車による胡同めぐりをするなら、ぜひトライしてみてください。観光地ではない中国を見ることができると思います。
 

アジア写真帳(北京)