アジア写真帳アジアグルメ図鑑アジアグルメ図鑑(上海・中国江南)>得月楼

アジアグルメ図鑑(中国江南)−蘇州、太監弄の得月楼


「蘇州古典園林の魅力」へ        アジアグルメ図鑑(中国江南特集)へ



 蘇州に行った人なら一度は足を踏み入れる観前街、その観前街の一本南を走る太監弄という通りには、蘇州料理の名店が軒を連ねています。松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)で有名な蘇州料理店の代表格である松鶴楼乞食鶏で有名な王四酒家、私の大好きな蘇州麺の老舗である朱鴻興麺館、さらにはファストフード店なども数多く軒を連ねています。
 王四酒家の隣にある得月楼も、蘇州料理の老舗と聞いています。今日の夕食はこの得月楼に入ってみましょう。

上海から蘇州への行き方


 得月楼の建物は木造二階建ての由緒を感じさせるものですが、それ以上に魅力的なのが上の写真にある看板です。夜になると明かりが灯されて妖しく輝きます。この看板が目立つので、得月楼はすぐに見つかります。


 そんな伝統的な建物ですが、店内は意外にモダンですっきりしています。雰囲気的には庶民的な料理を食べさせてくれるような感じです。今日は三人でこの店に来ました。松鶴楼なら松鼠桂魚(桂魚の丸揚げ甘酢あんかけ)王四酒家ならこじき鶏というように、老舗の店ではそれぞれ名物料理があるのですが、ここ得月楼は他の二店までほどには名前を轟かせた名物料理はありません。せいぜい店の名前を冠した得月童鶏くらいでしょうか。
 この日は昼飯が重かったせいか、あまり空腹感がありません。そこで食べやすい料理を中心に、得月童鶏も入れて注文したいと思います。




 まず、出てきたのは白切鶏。蒸した鶏肉の冷菜です。
 おいしそうな色で出てきましたね。実際に食べてみると、これがかなり旨いんです。鶏肉も味が深くてしかも柔らかいのです。タレは、鶏のスープに紹興酒と醤油の香りが少し混じっています。タレも旨くて合格です。期待を上回る味です。

 

 次は、河エビの炒め物(油爆蝦)です。松鶴楼でも食べていましたが、松鶴楼に比べるとエビがちょっと小ぶりですね。おいしい油爆蝦だとは思うのですが、松鶴楼と比べるとちょっと物足りないかなという印象です。油爆蝦のおいしさというのは、表面がカリッとしていて、噛めば噛むほどエビの味が染み出てくるところにあります。そうした意味では、揚げ方も松鶴楼に比べるとカリカリ感に欠けていますし、噛めば噛むほどという状況にはなりません。でも。まあまあ及第かな。


 そして、江南料理の定番、蟹粉豆腐です。アルミホイルの中に入れられていて見栄えは芳しいものではないですが、味は合格です。今日の三人の空腹状況からすると、この料理が一番おいしく食べられたようです。さっぱりした料理なのに、味付けは芳醇です。
 後で支払いのときにわかったのですが、この店の価格は、他の老舗店に比べると驚くほど安いのですが、食器や内装を高級なものにして見栄えを良くしたらもっと価格を上げられるのになあというのが、私たち三人の共通の印象です。


 さて、お目当ての得月童鶏が出てきました。見るからにうまそうですね。
 得月楼の小姐(ウェイトレス)に聞いてみたら、蓮の葉にくるんで蒸し焼きしたうえで、特製のソースをかけているのだそうで、鶏を蓮の葉でくるんで蒸し焼きにしているという点ではこじき鶏と同じなんですね。こじき鶏に特製ソースがかかっているのだと考えれば良いのでしょうか。


 食べてみると、これが実にうまいのです。王四酒家の乞食鶏と比較しても、甲乙つけがたいですね。どちらも旨いのです。王四酒家の乞食鶏は炭で蒸し焼きした素朴な味、得月童鶏は甘口ですけど食べやすい美味しいソースがかかった洗練された味です。肉の焼き加減は、当然ですがちょうど良くてふっくらしています。得月童鶏の味は芳醇という形容詞が似合う味ですね。これ、気に入りました。

 

 上湯娃娃菜(白菜のスープ煮)です。こういう定番料理は、味が想像できますので安心して注文できます。期待通り味付けはさっぱりしていて、それでいてスープに老舗の店らしい伝統のコクが感じられます。これも旨いです。




 揚州炒飯です。私が思うに、日本で食べるチャーハンの原型はこの揚州炒飯ではないでしょうか。そういう意味では、日本人にとっては胃が疲れているときでも食べやすい料理だと思うのです。
 揚州はここ蘇州の北に2時間ほど車で走ったところにある街で、中国の南北を結んでいた京杭運河が揚子江(長江)と交わるところに位置しています。そうした地の利もあって、清の時代には塩商人が多く店や邸宅を構えた場所でしたし、清の時代は蘇州よりも大きな街でした。当然のことながら、蘇州とも関わりが深かった街ですから、蘇州に揚州の文化としておいしい揚州炒飯があるに違いないというのが、私の推測でした。。


 蘇州のいろいろなレストランで揚州炒飯を食べましたが、今のところ、この得月楼の楊州炒飯はかなり上位に位置づけたい味です。私の基準では、揚州炒飯の良さは軽くさわやかに炒められているところにあります。味も食感も軽やかな揚州炒飯が私の好みなのです。そうした視点から見ると、サラリと炒められたこの揚州炒飯は私好みの味です。エビも沢山入っていて旨いですよ。


 中華料理で注文する皿数は「人数+1」が基本です。三人で来た時には4皿ということになりますが 、ちょっとそれでは寂しいのでもう一品くらい増やすことはよくあります。今日はちょっと食い過ぎの一日だから夕食は控えめにという割には、また食いすぎてしまいました。
 よくよく考えてみると、比較的庶民的な料理ばかり注文してしまったなとの反省もある一方で、少なくともこういった料理の場合は、ここ得月楼の料理の水準はかなり高いということが確認できました。
 値段もリーズナブルだし味も良いので、あまり気取らずに仲間内や家族で食事するときなどに利用できるお勧めレストランです。

上海から蘇州への行き方



「蘇州古典園林の魅力」へ        アジアグルメ図鑑(中国江南特集)へ

グルメな上海旅行をするために
上海グルメ(はじめに、朝食・昼食編) 上海グルメ(夕食編)


アジアグルメ図鑑(上海・中国江南) 蘇州編 主な内容

蘇州旅行指南(蘇州旅行の楽しみ方)

松鶴楼  こじき鶏の王四酒家  得月楼の桜桃汁肉  唐宮海鮮舫で飲茶  ワンタンの熙盛源
蘇州麺の朱鴻興麺館  蘇州麺の老舗、同得興本店  山塘街の秘伝臭豆腐  品芳茶社の点心

蘇州のグルメ(アジアグルメ図鑑(上海、中国江南)へ)