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老蘇州で蜜制火方(中国ハムの蒸煮)-アジアグルメ図鑑


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十全街の老蘇州

蘇州の十全街

  「蜜汁火方」という料理をご存知ですか。「火方」というのは中国ハムを蒸し煮した料理で、砂糖で甘く味をつけているので蜜汁火方と名づけられている料理です。この中国ハムの蒸し煮という料理は、蘇州料理の定番で中国では広く知られています。その蜜汁火方(中国ハムの蒸し煮)が美味しいということで地元の人に紹介してもらったレストランが老蘇州です。
 老蘇州は蘇州の十全街にある小さなレストランです。十全街は蘇州のショッピングストリートの一つで、歩道、自転車道と車道がそれぞれはっきり分けられていて、歩きやすい商店街です。自転車道と車道との間に木が植えられていて、周囲には高層ビルもないので、風格ある並木道になっています。老蘇州は小さなレストランではありますが、地元の人の人気は高いので、予約して行った方が良いレストランです。(中国語しか通じませんので、中国語ができない方はホテルのスタッフに予約してもらってください。)

蘇州の網師園

 老蘇州は南林飯店というホテルの入口付近にあります。老蘇州に行く場合は南林飯店を目印にするとよいでしょう。世界遺産の庭園、網師園もすぐ近くです。網師園は私のお気に入りの庭園の一つで、狭い敷地ではあるものの、緻密な設計により様々な表情を見せてくれる名園です。上のリンクのページ(蘇州古典園林の魅力)で詳細に紹介していますのでぜひ立ち寄ってみてください。老蘇州は網師園から歩いても5分程度です。

 
蘇州、同得興の美しい蘇州麺
 
 また、蘇州麺で有名な同得興の十全街店もすぐ近くです。蘇州麺は日本のラーメンに負けず劣らず美味しい麺で知られています。特に同得興の蘇州麺は私のお気に入りです。上の写真にある通り、麺は麺だけで運ばれてきます。この写真を見ると、蘇州麺の美味しさを分かってもらえると思います。細麺で太さも揃っていて大変丁寧に盛り付けられています。ラーメン好きな人なら、蘇州麺を食べたくなってしまうはずです。

蘇州麺の老舗、同得興の紅湯ラーメン

 別皿で運ばれてきた具を体裁よく麺の上に乗せたのが上の写真です。詳しいことは同得興のページで紹介していますのでそちらをご覧ください。なお、同得興は朝の7時から昼の13時までしか営業していないのでお気を付けください。

  
老蘇州(十全街の蘇州料理レストラン)
 
 そんな十全街に、このページで紹介するレストラン、老蘇州があります。蘇州料理の名店というと、松鶴楼得月楼が有名です。この二店はいずれも観前街に本店があって、山塘街方面に支店がありますが、十全街には店舗がありません。レストランのレベルとしてはそれら二店に遠く及ばないものの、十全街方面に滞在していて蘇州料理を食べてみたいという場合は、ここ老蘇州は利用価値があるかも知れません。また、蜜汁火方(中国ハムのトロトロ煮)のようなヘビーな料理がお好きな方には、蘇州のどこに泊まっていようと、あるいは上海からの日帰りでも、ここ老蘇州はおすすめのレストランです。



薫魚と蟹粉豆腐

老蘇州の薫魚

 この日の私は出張で南林飯店に宿泊しており、一人の夕飯でした。老蘇州の蜜制火方については予め地元の中国人からうわさを聞いており、かつ、同得興の蘇州麺も食べたかったものですから、南林飯店に宿泊していた経緯にあります。
 一人ですから予約もしないで行ってみました。既にテーブルは他のお客さんでいっぱいでしたが、やはり一人で食べに来ていた中国人ビジネス客がたまたま四人席にいたので、相席させてもらって座ることができました。
 一人飯ですのであまりいろいろな料理を食べられませんが、まずは前菜ということで薫魚です。蘭の花が添えられて綺麗に盛り付けられています。

老蘇州の薫魚はおすすめ

 薫魚は揚げた魚を甘辛いタレに漬け込んだもので、上海料理の前菜として知られています。そもそも上海料理というのは准揚料理と言って上海、蘇州や揚州といった揚子江河口周辺のエリアで発達した料理の一分類で、そうした意味では蘇州料理と親戚みたいなものです。
 この薫魚はほど良く揚げた魚にタレの味がよく染み込んでいて美味しいです。どちらかというと日本人の味覚からすると魚を揚げすぎているレストランが多いなかで、ほど良く揚げているここの薫魚はおすすめの味です。

老蘇州の蟹粉豆腐

 続いて准揚料理の定番、蟹粉豆腐です。上海蟹として日本でも有名な大閘蟹は、蘇州の陽澄湖のものが最高級品とされています。日本人は上海蟹を上海の名産と勘違いしている人が多いのですが、実は蘇州の名産なのです。その蘇州に来たわけですから、蟹粉豆腐を注文しない手はありません。
 話はそれますが、上海蟹を食べるなら本当は蘇州の陽澄湖に行くのがベストです。何故ならば本当の陽澄湖産の蟹を食べることができるからです。上海で陽澄湖産の大閘蟹を食べても、本当に産地が陽澄湖なのか確認するすべはありません。産地偽装は日常的にあります。陽澄湖で食べた大閘蟹についてはこちらで紹介しています。

老蘇州の蟹粉豆腐

 さて、老蘇州の蟹粉豆腐に話を戻します。
 料理をアップで撮影した上の写真をご覧ください。上海蟹の本場ですから美味しそうな蟹粉が良く見えると思います。この料理に関して言えば、蟹粉は美味しいです。ところがどうしたのでしょうか、豆腐が美味しくないのです。その結果、蟹粉豆腐としては蘇州の他のレストランに比べると味が落ちるというのが率直な私の感想です。この日の豆腐がたまたま美味しくなかったのかもしれませんので断定的には申し上げられませんが、そんな印象です。

 


蜜制火方(中国ハムのトロトロ煮)は絶品

老蘇州の蜜汁火方(中国ハムの蒸し煮)

 そして、お待ちかねの蜜汁火方(中国ハムのトロトロ煮)が出てきました。ここ老蘇州では蜜制火方と呼ばれています。見た目にこってりしているし、量もかなり多いです。一人で食べに来た私は完食できるか不安になってしまいます。四人くらいで食べてちょうど良い大きさです。

老蘇州の蜜汁火方(中国ハムの蒸し煮)は美味しくておすすめ

 食べ始めてみると、まず箸を入れたら何と柔らかいことか、するっと箸が通ります。食べてみると、全然脂っこくありません。味付けは甘いので胃にずっしりとは来るものの、周りの野菜も一緒に食べるとさらに食べやすくなります。とにかく肉は柔らかく味付けは甘くて美味しいのです。まさにトロトロになるまで何時間も煮込まれた料理です。
 半分くらい残してしまうのではないかなどと最初は考えていた私ですが、なんと完食してしまいました。カロリーが高く一人で全部食べてしまうと身体に良いとは思えませんが、あまりの美味しさに箸が停まらなくなってしまったのです。さすがに地元の人が老蘇州の蜜制火方は美味しいというだけのことはあります。

老蘇州の揚州炒飯

 一人で来たのですから本当は白いご飯をお椀でもらえば良いのですが、揚州炒飯(日本でいうところの玉子チャーハン)を注文してしまいました。蘇州まで来ると揚州炒飯の本場みたいなものですから、揚州炒飯を食べたくなってしまうのです。
 揚州は蘇州からバスで二時間くらいの場所にある都市で、揚州炒飯揚州点心で知られたグルメの街です。私もグルメ目的で揚州に数回足を伸ばしています。

老蘇州の揚州炒飯

 そんな本場の揚州炒飯を知る者にとっては、ここ老蘇州の揚州炒飯は邪道です。何が邪道かというと、第一にハムが安物のハムであることです。金華ハム並みの良いハムを使わないとハムの味が炒飯に行き渡りません。しかも、ハムが少ない分、ニンジンでごまかしている(色が似ているだけ)のはもってのほかです。第二に、グリーンピースが入っていることです。こんなにグリーンピースを入れてしまうとグリーンピースの味が強すぎて他の素材の味が負けてしまいます。日本の玉子チャーハンもグリーンピースが入っていますが、だから美味しくないのです。
 そんなわけで、揚州炒飯は全くもって期待外れでした。はっきり言って私には美味しくないです。日本で食べるチャーハンがご飯の水気が飛んでいる分だけマシになっているだけで、わざわざ蘇州まで着て食べる揚州炒飯ではありません。

蘇州の滚綉坊(グンシウファン)

  ということで、老蘇州というレストランは蜜汁火方(中国ハムの蒸し煮)については文句なしの美味しさでしたが、料理によって若干の当たりはずれがあるようです。まあ、チャーハンについては日本の炒飯に食べ慣れている人には美味しく感じる味付けかも知れませんけど。

 さて、老蘇州がある十全街に並行して滚綉坊(グンシウファン)という路地があります。老蘇州と南林飯店の間を走る道路が滚綉坊(グンシウファン)です。この道を南林飯店に向かって左側に歩いていくと、蘇州らしい街並みを見ることができますかつては行政官の屋敷街だったエリアですから、当時の雰囲気が良く残っています。さらに、南林飯店の二つ目の入口(南林飯店山水楼への入口)近くまで歩いてくると、三軒程度のバーが並んでいたりします。十全街はバーが多い街としても知られていますが、ここ滚綉坊(グンシウファン)のバーもお洒落で軽い食事ができたりして、悪くないですよ。




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