タ・ソム、絞殺しの樹と美しいデバター｜アジア写真帳（アンコールワット）

　　　　　　　　　タ・ソム、絞殺しの樹と美しいデバター

　タ・ソムはアンコール遺跡の小さな仏教寺院です。ここタ・ソムの見どころは、東塔門に絡みつくガジュマル（絞殺しの樹）と美しいデバターです。観光客が比較的少ない遺跡なので、アンコール遺跡を静かに楽しむことができます。

絞殺しの樹で有名な寺院、タ・ソム

　タ・ソムはジャヤヴァルマン7世により１２世紀末に建立された仏教寺院です。絞殺しの樹で有名な寺院で、上の写真にある東塔門がガジュマルの根によって絞殺されているような写真は特に有名です。
　アンコール遺跡は、アンコールワットやバイヨンのような巨大寺院ばかりが日本では有名になっていますが、ここタ・ソムや、同時期に建造されたタ・ネイのような小寺院も神秘的で見どころは沢山あります。例えば、ここタ・ソムには、後ほど紹介しますが、私が最も気に入っているデバターがあったりします。
　

　タ・ソムの入口です。西塔門から入っています。

　

　先ほども書きましたが、タ・ソムは歴代の王の中では唯一仏教を信仰するジャヤヴァルマン7世が建立した仏教寺院です。ですから、実はこのタ・ソムにもバイヨンと同じように、観世音菩薩の四面塔があります。バイヨンのように四面塔が林立しているわけではなく、塔門の上に彫られているだけですのでそれほど目立ちません。

　中央祠堂に向かって歩いていきます。
　下にアンコール遺跡の地図を付けました。タ・ソムは地図の右上の方で、大きな濠を持つアンコール・トムの上にあるプレア・カーンから右に伸びる道の突き当りになります。

タ・ソムの中央祠堂

　タ・ソムの中央祠堂の周りは瓦礫が転がっているのですが、その壁面は美しいデバターでいっぱいです。後から知ったのですが、髪の毛を絞るデバターが有名だそうです。残念ながら、私は気づきませんでした。

　上の写真で中央祠堂の上の方に彫られているデバターです。ここのデバターは表情やポーズが豊富ですし、保存状態も良いです。もっと時間をかけてみてくるべきでした。

　蓮の花を持つアプサラです。なかなかおしとやかです。

　こちらも同じようなポーズをしていますが、一つ上のアプサラと比べるとさらに魅力的です。よくよく見比べてみると、ウエストがさらに細くなっているのと、腰から下を少しくねらせているからでしょうか、色気を感じさせます。

　ということで、実は現時点でアンコール遺跡で最も気に入っているデバターが、実はこのアプサラです。デバターに関して言えば、もちろんアンコールワットのデバターが最も見応えがありますけれども、その他ではバンテアイ・スレイとここタ・ソムのデバターが見応えがあるかなという気がします。

　構内は瓦礫だらけですけれども、壁面やデバターの保存状態は良好です。2000年以降に修復されたそうです。

　崩れ落ちた瓦礫を組み合わせながら、デバターや壁面装飾が上手に組み合わされている跡を見ることができます。

　そうした修復の努力のおかげで、素晴らしいデバターの数々をここタ・ソムでは鑑賞することができるのです。

　上の写真は恐らく塔門上のレリーフです。既に跡形もなくなっている搭門の上に乗っていたものではないでしょうか。地面ら置かれた状態で保存されています。

東塔門

　中央祠堂の周りのデバターは大変見事なのですが、タ・ソムで有名なのは何と言っても上の写真の風景です。東塔門に絡みつくガジュマルの姿です。確かに形がいいですね。タ・プロームのガジュマルは豪快、タ・ソムは可愛らしい感じです。

　こういう世界の観光客が訪れる世界遺産も、カンボジアの子供たちにとっては日常の遊び場です。さすがにここでは木登りはしていません。ままごとをしていました。こういう世界遺産が子供たちの遊び場になっているのもアンコール遺跡らしい風景です。

　この場所はタ・ソムに来たら誰もが記念写真を撮影する場所です。人を入れないで撮影するのはなかなか困難な場所とも言えます。確かに雰囲気のある素晴らしい写真を撮影できます。

　タ・ソムは小さな寺院ですけれども、デバターと東塔門は一見の価値があります。アンコール遺跡大回りコースには、タ・ソム以外にも魅力あふれる寺院が数多くあります。半日あればすべて見れると思いますので、ぜひ時間を作って回ってもらいたいものです。